まどろみのなかで ページ26
亮平は、たまにこうなる。昔に比べてかなり頻度が減ったとはいえ、定期的に感情の波があるみたい。簡単にいったら、考えることの全部、マイナス傾向になるんだって言ってた。マイナス傾向になって、無性に悲しくなる回数が増えた頃、自然と感じるらしい……あ、これ今、「発作」がくる前兆だなって。それで精神的にも辛くなるみたいで、こうして俺らを頼ってくる。
「亮平、今日一緒に寝よっか……俺も今日、一人で寝れそうにないや」
「うん、いっしょに、ねたいっ」
「そーしよ」
亮平の涙はぬぐってもぬぐっても、絶え間なく溢れてくる。辛そうな亮平はみたくないけど、こーいう姿をみると、安心する部分もあって……あ、まだこいつ、俺たちの弟なんだなって。
今でこそ、兄組六人の中では頭がいい成績優秀者、ってやつで、人付き合いもそれなりに上手い亮平だけど……やっぱり根本には、俺たちの末っ子だった「あべりょうへい」がいる。
本当は最後までかっこつけたかったけど、一応俺も、熱に浮かされている身であるわけでして……睡魔はいとも簡単に、俺を襲撃してきた。まどろんでいく風景の中で、少しだけすっきりした顔の亮平が「大介、眠い？」って聞いてくる。ん、と辛うじて答えると、今度は規則正しくポンポンと布団を叩かれた。なんだこれ、やっぱり亮平の方がお兄ちゃんみたいで、少し悲しいじゃないか。
「いいよ、無理しないで……寝れるときは、思いっきり寝て、体力つけて」
「ん……りょーへい、くる、よね？」
「大丈夫、俺も一緒の布団に、今日入るから。夕飯になったら起こすからね」
「つらくなったら、ひるまでも、はいって、こいよ」
「……うん、分かってる。でも今は佐久間の方がしんどいから」
あ、佐久間呼びにもどちゃった、って残念がる自分がどこかにいる。「佐久間」って呼んで欲しいって、自分からみんなに言ったのに。俺は、自分の名前が好きじゃないから、あのくそみたいな親のこと、どうしても思い出しちゃうから。
でも、不思議だけど、亮平は嫌じゃない。寧ろ、少し嬉しいんだ。
閉じてく俺の世界の中で、ふわふわと、手を宙に上げた。そしたら、優しく亮平が握り返してくれる感触がする。変わらず、頭は痛い、身体の節々が痛い、呼吸しずらい、身体が熱いあ、でも……俺、今絶対いい夢みれる。嫁がでてくる夢よりも、もっといい夢……そうだなぁ、例えば……俺たちが会ったばっかりの頃の夢、とか？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1674人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リムる(プロフ) - 千晴さん» ありがとうございます！何度も読めるなんて寧ろラッキーって感じです！いつも素敵なお話で何度も読み返してます。無理のない範囲で頑張って下さい！ (2020年8月9日 19時) (
レス) id: b5e023cd9b (このIDを非表示/違反報告)
千晴(プロフ) - リムるさん» リクエストありがとうございます！本編中にも似たようなお話が登場してしまうのですが、内容が多少被っていても大丈夫でしょうか、レパートリィ少ない作者ですみません！ (2020年8月5日 21時) (レス) id: 36259cee76 (このIDを非表示/違反報告)
千晴(プロフ) - 柿ちゃんさん» リクエストありがとうございます！無理しちゃう健気なskくんを一生懸命書かせていただきますので、少々お待ちください！ (2020年8月5日 21時) (レス) id: 36259cee76 (このIDを非表示/違反報告)
KUMA(プロフ) - 千晴さん» ありがとうございます！楽しみに待ってます！ (2020年8月5日 13時) (レス) id: 0b66efa19b (このIDを非表示/違反報告)
阿部月姫(ｶｸﾞﾔ)(プロフ) - 千晴さん» レスありがとうございます！ はい！大丈夫です！！ (2020年8月5日 13時) (レス) id: 2beffc3723 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：千晴 | 作成日時：2020年7月24日 1時
