検索窓
今日:24 hit、昨日:65 hit、合計:613,047 hit

大きいお兄ちゃん ページ20

「ラウ、ラウール? 大丈夫大丈夫、もう大丈夫だから、無理しなくていいんだよ、な!?」
「そうだぞラウ、ひーくんの言う通りだ。もうここでは『ご飯』はちゃんとでてくる、大丈夫、また夜もラウの分あるからな、そこでもまた食べられるから、な、大丈夫」
「う……ゲッフ、ゴッホッ……う、おえぇ……だべだい……だべたい、よ」
 小さい声だったけど……最後に聞こえてきた悲鳴はきっと……ラウールが実の「両親」に言いたかった言葉。
「ラ〜ウ、大丈夫大丈夫、な、大丈夫だから。お腹空いてたんだよな、もう大丈夫だからな、いっぱいご飯一緒に食べて、これから自分がどれくらい食べれるかお勉強していこうな〜」
「ふえぇ……」
 智先生の言葉を聞いて、俺の顔が火に焙られたりんご飴みたいに歪んだ。
 そっか、ラウールはずっと、その中で生活してきたんだ。……いつ、飯がでてくるのかも分からない環境で、きっと、空腹に苦しむ日もあったのだろう。そう思うと、大分泣かなくなったはずなのに、俺の目からじわりと涙がにじんできた。駄目だ、耐えろ、耐えろ俺、今辛いのは俺じゃない、ラウなのに。
「照、代わる」
 その時、力強い声が聞こえてきて、俺の肩に手が添えられる。振り返ると、杖を傍に放り投げて、涼太に支えられながら辰哉が立っていた。「辛いだろ?」とアイコンタクトをとってくる辰哉に、一つ頷いて、俺は身体をずらす。するとすかさず、涼太が辰哉の足を庇いながら、一緒にゆっくりと腰を落とした。ラウールの身体を背後から支えて、優しくゆらゆらと揺らす。
「涼太、ありがとな」
「ん、全然。俺はなにも出来ないから」
「んなことねーよ……あ、怖かったな……もうおしまい、おしまいだぞ、ラウ」
 丸くて、柔らかくて……俺のことを幾度も安心させてくれた声。それを聞いた途端、一度ラウールは固まって、床に向けて嘔吐した。まだほぼ固形な吐しゃ物が、キッチンの床に広がった。

大きいお兄ちゃん→←大きいお兄ちゃん



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (512 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1674人がお気に入り
設定タグ:SnowMan , 病系 , 絆系
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

リムる(プロフ) - 千晴さん» ありがとうございます!何度も読めるなんて寧ろラッキーって感じです!いつも素敵なお話で何度も読み返してます。無理のない範囲で頑張って下さい! (2020年8月9日 19時) (レス) id: b5e023cd9b (このIDを非表示/違反報告)
千晴(プロフ) - リムるさん» リクエストありがとうございます!本編中にも似たようなお話が登場してしまうのですが、内容が多少被っていても大丈夫でしょうか、レパートリィ少ない作者ですみません! (2020年8月5日 21時) (レス) id: 36259cee76 (このIDを非表示/違反報告)
千晴(プロフ) - 柿ちゃんさん» リクエストありがとうございます!無理しちゃう健気なskくんを一生懸命書かせていただきますので、少々お待ちください! (2020年8月5日 21時) (レス) id: 36259cee76 (このIDを非表示/違反報告)
KUMA(プロフ) - 千晴さん» ありがとうございます!楽しみに待ってます! (2020年8月5日 13時) (レス) id: 0b66efa19b (このIDを非表示/違反報告)
阿部月姫(カグヤ)(プロフ) - 千晴さん» レスありがとうございます! はい!大丈夫です!! (2020年8月5日 13時) (レス) id: 2beffc3723 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:千晴 | 作成日時:2020年7月24日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。