小さいお兄ちゃん ページ14
(side 蓮・小学三年生)
未だに、少し怖くなることもある。ここで過ごした数カ月間のことが、本当は夢で、現実はまだ、あの薄暗い家の中にいるんじゃないかって。そう思うと、目の前で広げられる「優しさ」を受け取ることが、物凄く怖いことがある。
だって「優しさ」を知らないままだったら、それがなくなった時、あんまり傷つかないですむ。最初からなにも持っていなければ、失うことがない。
なくなる苦しさも、感じないじゃないか。
「はい、それじゃあ次は右耳から音が聞こえるよ。左耳と同じように、聞こえたら手元のボタン押してね」
大きな総合病院の中だから、診療科によって大分雰囲気が変わる。俺がさっきまでいたアレルギー科は薬の匂いが充満していたけど、康二のかよう耳鼻科はツンと鼻につくような匂いはしなくて、代わりに難しそうなごつい機械がいっぱい置かれている。
白いパーテーションで仕切られた簡素な診察室。古い綿が埋め込まれたベンチに、俺と櫻井先生は並んで座って、康二の診察風景を眺めていた。黒くて背もたれがない丸い椅子に座らされた康二は、心なしか緊張した顔をしていて、隣をみると櫻井先生が更に緊張した顔で拳を握りこめていた。いや、あんたはどこにいんだよ、なんて思わずツッコミたくなる。
「終わりです、ヘットフォン外していいよ。あ、ご同行の方、こちらにお願いします」
先生が動作をつけてゆっくりと喋るおかげか、普段は耳のハンデのお陰で咄嗟に物事が捉えられない康二でも、すんなり行動に起こすことが出来ていた。馬鹿でかいヘットフォンを看護師さんに渡した康二の後ろに、立ち上がった櫻井先生と並ぶ。
「あの、先生、康二どうでした？」
「うん、まだちょっとつけてる補聴器の調整は必要かな。でも逆にいえば、もっと調整すればもっと聞こえるようになりますよ。あ、中耳炎の方ももう心配ありません、完治しています」
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リムる(プロフ) - 千晴さん» ありがとうございます！何度も読めるなんて寧ろラッキーって感じです！いつも素敵なお話で何度も読み返してます。無理のない範囲で頑張って下さい！ (2020年8月9日 19時) (
レス) id: b5e023cd9b (このIDを非表示/違反報告)
千晴(プロフ) - リムるさん» リクエストありがとうございます！本編中にも似たようなお話が登場してしまうのですが、内容が多少被っていても大丈夫でしょうか、レパートリィ少ない作者ですみません！ (2020年8月5日 21時) (レス) id: 36259cee76 (このIDを非表示/違反報告)
千晴(プロフ) - 柿ちゃんさん» リクエストありがとうございます！無理しちゃう健気なskくんを一生懸命書かせていただきますので、少々お待ちください！ (2020年8月5日 21時) (レス) id: 36259cee76 (このIDを非表示/違反報告)
KUMA(プロフ) - 千晴さん» ありがとうございます！楽しみに待ってます！ (2020年8月5日 13時) (レス) id: 0b66efa19b (このIDを非表示/違反報告)
阿部月姫(ｶｸﾞﾔ)(プロフ) - 千晴さん» レスありがとうございます！ はい！大丈夫です！！ (2020年8月5日 13時) (レス) id: 2beffc3723 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千晴 | 作成日時：2020年7月24日 1時
