甘 く 溶 け て # Haruki,Takuya

# 優先順位 (haruki) ページ19

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ギィ、とおかしな音を鳴らせてアパートのドア開けると、




「なあ、今日飲まへん？」
「いいけど、」
「けど…？」
「お高いよ？」
「こいつやろ？」



はるちゃんは、しがないひとり暮らしのOLが手を出せないお高めなビールを両手に持って少しふるふる。



「くっそ、野球選手っていいな、」
「まあ正直お金はあるよな」
「もう、私も日ハムに入れてほしいわ。」
「お前には無理やろ」
「なんで！」
「じゃあ150km打てんの？走れんの？」
「打てないし運動音痴です、無理ですね、」
「やろ？」
「じゃあセクハラ上司と共にOL頑張りますよ、」



はるちゃんは目を大きくまん丸にして、
ビールを机にがたん、と置く。



「は、お前、セクハラされてんの？」
「もう慣れたけどね」
「あかんやろ、訴えねえの？」
「どうすんの、ごたごたになって私の仕事なくなったら。
それこそここでビールなんて飲めなくなるわい！」




このおんぼろアパートにプロ野球選手が来て一緒に酒を飲んでるのも非現実的すぎだけどさ？




「はるちゃんみたくお金ありまくりな人間じゃないからさ、セクハラとか言ってる場合じゃないわけよ。」
「ほんならさ、俺んち来る？」
「うん、いくいく〜、って、……は、？」
「その仕事やめればええやん。ほんで俺んち住めば？
金づるにでも何でも使ってくれればええし。」
「それってつまり、」
「付き合う前提で。やけどな、」




ニコリ、とはるちゃんは笑う。




「その条件飲んだら、あのお高いビール飲めるの？」
「まあな、」
「その条件飲んだ！」
「ビールで決めるんかい！」









(優先順位、おしまい)

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