45 ページ45
あれから数十分程でみんながやってきた。
目を真っ赤にしている私を見て、みんな心配してくれた。
でも私は｢大丈夫だから｣と言った。
既に黒ちゃんの事だけでみんな心配なのに、さらに心配かけたらいけないと思ったからだ。
でも湧と颯太にはお見通しだったようで、結局ずっと慰めて貰ってしまった。
やっぱり幼なじみには敵わないなと思った。
あれから何時間待っただろうか。
一向に集中治療室から誰も出てくることはなく、さらに不安が募る。
すると、黒ちゃんの担当医の人が出てきた。
医｢お待たせしてすみません。ただ今治療の最中なのですが、普段より体の状態が悪く、回復の傾向が見られません。誠に言いにくいのですが、もう命が持たないかと…。｣
翔｢…えっ…そ、そんな…。｣
安｢ひらつ…。｣
担当医の人から思いもよらないことを告げられ、私たちは呆然と立ち尽くした。
それを聞いた瞬間、ひらつは静かに涙を流した。
なんて声をかけていいのか分からず、私は黙って俯いた。
それと同時に、さっき流したばっかの涙が再び溢れてきた。
黒ちゃんとの思い出が一つ一つ蘇ってきて、私の中に辛さが募った。
｢…なんで…っなんで黒ちゃんばっかりっ…こんな目に遭わないといけないのっ…。こんなに純粋で…いい子なのにっ…。｣
颯｢…俺…辛いよ…。｣
湧｢A…、颯太…。｣
医｢お気持ちよく分かります…｡私たちも同じ気持ちです。｣
医｢今から少しだけ治療を中止するので、黒田光輝さんとの最後の面会の時間を取ります。最後になるのでしっかりと黒田さんの姿を目に焼き付けてください。｣
翔｢…えっ、いいんですか？｣
医｢…えぇ、これが私たちがあなた達にできる最後のお仕事ですから。｣
｢…ありがとうございますっ…。｣
医｢では、こちらへどうぞ。｣
そう言われ、私たちは集中治療室に足を踏み入れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 370人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いちごバナナ | 作成日時：2021年4月29日 21時
