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1段目 side.8 ページ1
ジリジリとした日差しに、セミの声。
否応なしに俺を憔悴させる夏の風物詩。
クールビズだのなんだのの張り紙が部署の入り口に貼られ、その隣にはエアコン温度は28℃のみ許可します、とケチケチした文言が並ぶので余計に気疲れする。
デスクで昼食のサンドイッチを貪りながらパソコンをいじっていると、女子社員たちが食堂に向かいながら喋っているのが聞こえ、それとなく耳を傾けた。
「最近さ、会社の近くに美味しいアイス屋さんできたの知ってる？」
「あぁあれね！なんだっけ、ハピネスだっけ？」
「そーそー！」
ハピネス。幸せというものが何か未だ分かってない俺にとって、まだ上手く呑み込めない言葉だ。
「アイスめっちゃ美味しいし、おしゃれな外装だしよかったよ〜！今度一緒に行こうね」
「行く行く〜！」
彼女たちが部屋を出て行ってから、検索欄に「ハピネス アイス」と入れこんだ。明日は午後休だし、時には自分への甘やかしも必要だ。
そう決めて、俺は喉元に引っかかったレタスを飲み込んだ。
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作者名：メタ子 | 作成日時：2021年12月25日 19時
