ちょっとした、/8 ページ16
ぽろりと涙が出た。ここは大学で、しかも講義の途中。涙が出た理由は単純明快で、そこそこくだらないものだった。母と喧嘩した。道中に信号機で何度も止まらされた。会社から内定が貰えなかった。友達に悪口を言われていた。そんな小さな不運が、私の胸にセンダングサのようにチクチクとしながらくっついており、何度も傷つけられているような気がしてたまらなかった。
マスクをしていたから、バレないと思っていた。でも、隣の席の彼には気づかれていたようだ。ノートの切れ端が、そっと右側から滑ってくる。
『大丈夫？』
切れ端に書かれた殴り書きの文字。ちらっと横を見やると不安げな顔をしているクラスメイトのはっちがいた。目が合って気まずくなり、「……ここで、こうなるから〜…」と先生の声が部屋に大きく響いて、それを合図にしたようにぱっと顔の向きを変えた。渡された切れ端に、大丈夫、とだけ書いて彼に渡すとすぐに返事が帰ってくる。
『質問、間違えた。駄目そう？』
…反復反応。この間心理学で習った内容だ。人は大丈夫かと聞かれると大丈夫と返してしまう。逆に辛そうだったり困っていそうな相手には「駄目そう？」と聞くと素直に応えてくれるというものだった。まさか、ここで活用されるなんて思っていなかった。『駄目かも』と書き紙を渡すと、彼はこくりと頷いて、手を上げた。
「あの、先生すみません。隣の人具合悪いみたいなので医務室連れて行っていいですか」
「…分かった。気をつけて行けよ。で、次、135ページ…」
ぶっきらぼうに先生に答えられ、彼に腕を引かれて教室を出る。医務室なんて当然行くはずもなく、私とはっちはラウンジまで歩いた。
「…ありがとう、はっち」
「…別に」
ラウンジに取り付けてあるアイスの自販機のボタンを押して、落ちてきたパルムを私にくれた。その手が、表情が、心が優しくて、私はまた泣きだしてしまった。
「……何があったのか知らないけど、駄目なときは頼って」
私の心のトゲは、その言葉でぽろぽろと取れていく。袋を開けてアイスを口に咥えた。少ししょっぱくて、甘い味がする。傷を修復する薬を塗られたかのように、ジンと身体に冷たさが沁みた。私も貴方みたいに優しくなりたい。貴方の心のトゲを取れるようになりたい。憧れともとれるそれがジワジワと恋心に変わるのをごまかすように、アイスを貪るのだった。
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メタ子(プロフ) - 鴉さん» ワ！ツイッターのやつそのまま移植したら忘れてました😭！ご指摘ありがとうございます！一生気づかんかったと思うのでほんとありがたいです…！失礼致しました…！ (2021年12月5日 21時) (
レス) id: 304efcf4b3 (このIDを非表示/違反報告)
鴉 - 更新おつかれさまです、ありがとうございます。あの、新しく更新なさったページ、全部名前が”夢主“のままになってます…！わざとでしたらすみません…！ (2021年12月5日 20時) (レス) @page41 id: a6ab53d0ed (このIDを非表示/違反報告)
メタ子(プロフ) - 鴉さん» 鴉さんこんにちは！！ありがとうございます！！！頑張って書いてよかったです〜！！！これからも彼らを生き生きさせられるよう尽力します☺💖 (2021年12月5日 12時) (レス) id: 304efcf4b3 (このIDを非表示/違反報告)
鴉 - コメ失礼します。あの、すごく好きです…特に3と8の口調が似てて好きです、にゃんとｵ蘭も含めてみんな生きててすごいな、と思いました…！ (2021年12月4日 22時) (レス) id: a6ab53d0ed (このIDを非表示/違反報告)
メタ子(プロフ) - はるさん» はるさん！お久しぶりです！ありがとうございます〜！！めちゃ嬉しいです🥲💕また溜まったら放出するのでよろしくお願いします…！ (2021年10月4日 7時) (レス) id: 304efcf4b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：メタ子 | 作成日時：2021年10月3日 17時
