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昔のことを思い出しながら明日の授業の資料作りを教室で進める。
すると、もう既に生徒は教室から出ていったのに扉の開く音が聞こえた。
「なんか忘れ物でもしたん…………か、って……」
「久しぶり。」
「………久しぶり、北斗。」
生徒が忘れ物でも取りに来たのかと思い、顔を向けるとそこに立っていたのは北斗だった。
すると北斗は教室の中に入って来て俺の前に立つ。
俺は昔のことをまだ引きづっているからか北斗の目を見れない。
「………康二、先生になってたんだね。」
「北斗もやん。びっくりしたわ。」
北斗は俺より賢かったから、偏差値の高い教育学部に進み先生になったそう。
そんな話をしてくれている時も俺は手を止めず耳を傾け、相槌を打つだけ。
しばらくしていきなり黙ったこと思ったら「10年前のことなんだけどさ」と切り出し、俺は思わず手が止まった。
「俺さ、康二に言えてないことあるし聞けてないことある。」
「…………うん。」
「俺、回りくどくなんか言えないから直球で言わせてもらうけど。あの時、康二のこと好きだった。だから
あの日避けられるようになってまじでしんどかった。」
俺は何も言えず、ただ手元にある生物の教科書を眺めることしか出来ない。
謝るのが正しいのか、それはそうだ。
でもどうやって謝る？
「あの時は避けてごめん」
「避けて傷付けてごめん」
そんなことをグルグル頭の中で考えていると北斗が俺の目線と合わせるために屈んで、「顔、上げて」と言われたためゆっくり顔を上げる。
「あの時はなんでって。は？ってなったけどそれでも今会えて嬉しいって思うのはさ。………今でも康二のことが好きだからだよ。」
俺の目を見て話す北斗は、当時と同じ優しい顔と柔らかな笑顔でそう言い、唇に柔らかい感触がした。
北斗にキス、されたのだ。
何も抵抗出来ず呆気にとられてた俺は聞きなれた声でふと我に返った。
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作者名：shiro. | 作成日時：2020年10月21日 20時
