【3年A組】mind voice 3

番外編 ページ19

俺がお前を好きな理由。





初めて抱いた印象はいい奴。

基本的に笑顔で周りに人が絶えなかった。

けど、俺にとっては仲のいい女子の一人。

それ以上でも以下でもない。






ただ諏訪や水越とかはよく彼奴に相談を持ちかけていたし、中尾も意外にも水越との恋愛相談をしているらしかった。

あとから知ったが中尾と水越が付き合ったのも彼奴が縁を繋げたらしい。



武智と一緒にいるところも見たことあるから、クラスのやつにも先生にも信頼されるようなやつ。




「(多分…人の事をよく見てるんだな。)」







だから、母さんがあんなことになって…

金がなくて、バイトを始めて、



…ダンスを辞めたとき。





誰にも相談できなかった俺に、最初に気づいてくれたのもアイツだった。





『…ねぇ、甲斐。最近だいじょーぶ？』



「……あ？」



『言いたくない事ならいいんだけど、最近眠そうだし。


…なんだか忙しそうだから大丈夫かなって。』




二人で話すのはなんだかんだ言って、その時が初めてだったのかもしれない。




「…なんでもねーよ。

なに、心配してくれてんのかー？」



気づかれたことに多少驚きつつも、


ダチにも言えないような事を話す気にはなれなかったから笑って適当にはぐらかそうとした。




でも、







『………うん。』



「え、」




『すごく心配してる。』



気まずそうにしながらもはっきりと口にした。


俺のことをちゃんと心配してる、と。





その瞬間何だか恥ずかしくなって急に顔を見れなくなった。







「(俺のことを…心配、する。)」





いつもの明るい感じではなくて…、真剣に思ってくれているのがわかった。





「あ、…ありがとう。」


『………うん。』




「(おれ、普段どんな感じで話してたっけか。)」




『だから、辛くなったら…


ちゃんと、いってね。』




逸らしてた目を此方に向けて、もごもごと言うと慌てて踵を返す。




残された俺の顔は多分真っ赤だったと思う。





そんなふうにちゃんと心配されたのは、気にしてもらったのは、いつぶりだったろうか…




「(そりゃそうか…)」



ダチは事情を知らないし、ダンスメンバーにも話してない。



母さんたちにも“大丈夫だ”って言ってるから…








だから誰にも気づかれないと思ってた。





でも気づいた。気づいてくれた。






その去っていく後ろ姿を眺めながら、俺は自分の鼓動が速くなっていくのを自覚した。

ごめんなさい→←ひゃくじゅう

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す