煉獄の炎に焦がれる

31話 ページ31

ハッと目を覚ますとそこには心配そうに私の顔を覗き込む煉獄さんと千寿郎くんが居た



「む、目が覚めたか！

うなされていたようだが大丈夫か？」


煉獄さんが気を使ってくれるが言葉が全く頭に入ってこない

心臓が果てしなく早く脈を打っている


ドクドクとする胸に手を当てて落ち着けようとしていると煉獄さんは強く握りしめる私の手を取りそっと包み込んで



「千寿郎、すまないが彼女に水をもってきてくれるか？」

と言う



「勿論です！すぐに準備致します！」

そう言って急いで千寿郎くんが部屋を出ていくのを確認すると私の方を向いて


「きっと悪い夢でも見たんだろう

大丈夫だ、何も怖くない


君は俺が守る・・・」


そう言って私の手を優しくさすってくれる



夢・・・？

あんなに生々しい夢を見たのは初めてだ



「・・杏寿郎さん・・・・」


夢の中の私はそう言っていた

どういう事？

私は煉獄さんのことを名前で呼んだことは無い

それに何だかすごく不安で落ち着かない



冷や汗が垂れる



煉獄さんはそっと私のおでこに伝う汗を手ぬぐいで拭ってくれると


「こんな時に言うのは不謹慎だが君に名前を呼ばれるのがこんなに嬉しいとは・・・

よもや、よもやだ！」


そう言って笑う



そんな煉獄さんの姿に何故だかほっとする

「すみません、馴れ馴れしく」

そういうと

「いや、これからも杏寿郎と呼んで欲しい！

俺も君の事を名前で呼びたい！」


と言ってくださるものだから嬉しくなって思わず

「はい！」

と笑みが零れた



それから直ぐに千寿郎くんが部屋にお水を持ってきてくれて落ち着いた私を見るなり安心したように笑ってくれた


良かった・・・あれはただの夢なんだ


そう思いながらもあの夢が脳裏に焼き付いて離れない



それから少しの不安を残したまま私たちはいつもの様に一緒に笑い合った

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