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｢…大丈夫だ。話そうここまでの事を＿＿｣
LC 20-3 ページ44
声のした先を見ると、一歩も動かず同じ場所に座っているアローン様がいた。
覇気のない様子で俺を見る目に自ら死を望んだ弟が一瞬過るようになる。
たが先程よりも大分落ち着きを取り戻してる今なら、俺の疑問にも答えてくれるかも知れない。
｢アローン様…お聞かせください。あの場で何があったのですか？｣
主の前に意を決するように膝を突いて聞くと、アローン様はみるみる顔が青ざめ手を振るわせた。
その手を強く押さえ込む様子は無理矢理何かを出さぬように耐えている様に見えた。
アローン様は、剥がしても剥がしても記憶はかえって厚みを増していくと震える声で話始めた。
始めはパンドラによって夢界に捕われ、気の狂いそうな闇の中に幽閉されていたという。双子神ヒュプノスが、ハーデスではない事に気づき再びハーデスをアローン様の肉体に受肉しようとした。が然しこれは失敗に終わりその代わり持ちうる力はハーデスの消滅と共に消えたと。
だからあの時会話も影の移動もできなくなったのかと納得する。
｢僕が…いけなかったのか？初めは使命とか力とかがあることが嬉しくて堪らなかった。自分が人を助ける、救えるんだと思って。ラノスに会ってからはより強く思っていた。はずだったんだ。でも…いつからか俺はこの力を奮うこそが目的になってて…理由は後告げで、正義だとかなんだで｣
｢アローン様…｣
｢アローン？違うよ輝火。俺はアローンなんかじゃない｣
だからあの時会話も影の移動もできなくなったのかと納得する。
｢僕が…いけなかったのか？初めは使命とか力とかがあることが嬉しくて堪らなかった。自分が人を助ける、救えるんだと思って。ラノスに会ってからはより強く思っていた。はずだったんだ。でも…いつからか俺はこの力を奮うこそが目的になってて…理由は後告げで、正義だとかなんだで｣
｢アローン様…｣
｢アローン？違うよ輝火。俺はアローンなんかじゃない｣
首を大きく横に振り自身を嘲笑う様な否定を見せてきたこのアローンではないという存在…？
そこに理解が追いつかないというのに、そこに追い撃ちでもかけるかのように話を続けてきた。
｢俺はアローンの肉体から主アローンを追いだし、ハーデスを偽り、この世界を…物語をっ破壊した"汚れもの"の魂さ｣
｢アローンはこんな奴ではないぞ。もっと清らかで優しくてこんな邪悪なことなど考えもしない人だ｣
｢ハハッ…その点俺はどうした？ 力に驕り高ぶり、輝火の気持ちさえも利用して…いまだ未知数的な力だって輝火に使った。ハーデスの小宇宙を感じて漸く分かったんだ、あれは人間には出せない夥しい小宇宙の量だったと…！｣
｢術者が及ぼす影響と使用される対象者の負担、また言葉の差異から生まれる能力発現についてだって、少し考えれば分かったんだ。分かったはずなのにっ…！｣
頭を手で抱え嚙みしめた唇からうめきが漏れている。それは周りに見せていた堂々たる姿とは真逆の自責の念に苛まれる罪人のような姿だった。
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作者名：ルビ | 作成日時：2022年2月1日 22時
