LC 12-2 ページ2
ヒュプノスも席に座り、いよいよチェスがはじまる。
さぁ先行と後攻どう決める？
｢ハーデス様。先行をどうぞ。｣
先行…つまり白
まずは、白のポーンを前に置く。
ヒュプノスは俺のポーンが動けないように同じ列にへ動かした。
タイムリミットは１時間。乗ったはいいもののこの短い時間でどうしたものか
｢フム…これは困ったな｣
首を少し傾けてボソッと呟く
どうやら、ヒュプノスは意外にも慎重な性格らしい。
セオリーに徹した戦法であるから隙はそうそうにこない
守りが固い上に攻めもうまい。
これでどうだ？
｢なるほど…これはなかなか｣
…捕られた。罠だったか
焦りで思考がうまく回らない
顔に汗がにじみ出る
｢何かを焦っておられるご様子。一手ごとに詰めの甘さが見て取れますよハーデス様｣
｢…クッ｣
俺は、クイーンを逃げるように駒を前に置く。
逃がすまいとヒュプノスはナイトを俺のクイーンへと進行してきた。
右手の指を癖で噛もうとした所で我に返り、ビショップでナイトを足止めする
＿＿…アローン様
＿＿時間か？輝火
＿＿はい。
＿＿わかった。少し待っていろ。
｢もう一騎のナイトを前に…チェックメイトですね｣
｢そうだな、ヒュプノス。斜め前ががら空きだ。｣
｢チェックメイト。｣
クイーンを進め俺はヒュプノスのキングに剣を向けた。
｢なっ！｣
驚きを隠せていない顔を見せたヒュプノス
俺が劣勢に見えて油断したのだろう？
さぞ、自分の手の平で踊っていると思ったのだろう？
悪いがお前より悪趣味な戦法はいくらだってある。お前の方がよっぽど純粋で美しい手だったよ。
だが、俺には未来の約243年分の戦術を知っているんだ。知識では負けるつもりはない。
｢油断は禁物だ。お前こそ最後は詰めが甘いようだな。だが、余は久しぶりに有意義な時間を過ごせた。余は戻るぞ。｣
俺は自ら椅子を後ろへ引いて立ち上がる。
ヒュプノスが目で俺を追いかけるものだから
｢なんだ？他に何かあるのか？｣
｢何もございません。貴重なお時間ありがとうございました…｣
｢そうか。楽しかったぞ｣
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作者名：ルビ | 作成日時：2022年2月1日 22時
