鶴は幸せを運ぶのか Ⅱ (ページ10)

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北岡秀一。
その名前は、こういった仕事ではちょくちょく話題に上がる、敏腕弁護士の名前だ。
最近だと、投資家達から金を巻き上げた坂裏商事を無罪にした、とか。凄い人であるのは間違えないのだけれど…報酬次第では白を黒にする、なんて言われていて、評判は良くないのが正直なところ。

…彼が出てくるということは、もしかしたら本当にスクープが眠っているかもしれない。

『…真逆、貴方があの北岡弁護士だとは思いもしませんでした』
「光栄ですね。貴方のような美人が、私のことを知っていてくださるとは。それに、二度も偶然出会うだなんて…運命だとは思いませんか？」
『…いえ。…それにしても、貴方を雇うということは、河津製薬にはやましいことがあるという解釈でよろしいんですかね』
「あ、それは誤解です。ありもしない噂を流されては…会社のイメージが傷付く」
『…失礼、』

北岡サンは裏があるようにもないようにも見える笑顔で、スラスラ言葉を紡ぐ。
さらりと口説き文句を口にするあたり、なんともやりずらい相手だ。

『…では、工場の中を案内して頂けますか？』

彼に探りを入れても大した収穫は見込めなさそうなので、方向を切り替える。ボロが出るとしたら、北岡サンよりも河津製薬のほうが先だろう。

彼はそれを聞いて、わざとらしく視線を逸らした。