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「なんだって…？河津製薬の工場排水が原因？…確かなのかソイツは」
『いや…でも、ある程度の状況証拠は揃ってると思うんですよね。金色のザリガニも髪の毛の生えたカエルも…工場排水が齎した突然変異だとすれば…』
勿論アレらが本物ならですが、と付け足せば、編集長は成程な、と頷く。
「それに、その工場のある町で最近、原因不明の病気が流行っているとなれば…繋がりがないとは言いきれないわよね」
令子サンの言葉に編集長は何度か頷いて、徐に部屋の隅の荷物置きに腰掛ける。
その下で、真司が何か作業をしていた。
「お〜〜い真司ィ。お前何やってんだ？」
「あっ、ハイ！実は引越し先が決まったもんで！」
『えっ、マジ？』
真司の手元を見れば、彼はクルクルと寝袋を丸めていた。広がりに広がった真司の生活スペースは、随分とこじんまりしたものになっている。
珍しく掃除でもしているのかと思えば、まさか引越しの準備だったとは。
スッキリした仕事場の一角は、それが正しいはずなのに違和感を感じて、随分長い間彼が居座っていたのだなぁと思う。
真司の生活スペースがあるのを当たり前に思ってしまいかけていたことに気づき、少し癪だ。
「そうかそうか。ソイツはめでたいな…が、引越しは後だ。お前もAと一緒に動いてくれ」
必要最低限のものを詰め込んだバッグを手に取り、掛けてある白いコートに手を通す。
「もしかしたらとんでもねぇスクープになるかも知んねぇぞ、今回のヤツは」
『一応河津製薬に取材のアポ取れました。一時に、東和シティホテルだそうです』
「オウ、頑張ってこいよ」
『ンー…スクープだと良いんですけどねぇ』
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2022年10月1日 14時
