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「……？あっ、Aちゃん？！」
『真司…』
「一瞬誰か分からなかった…」
そこに居たのは真司だった。
キッチンの奥から優衣も顔を出して、彼に手を振る。
ーガチャン！
「ッあ！」
と、背後で何かが落ちた音がした。見れば、お客さんの一人がカップを倒してしまったらしい。
片付けようとすれば、それより早く真司が動く。
「大丈夫ですか？コレ、使って…」
「ごめんなさい…あ、鶴さん、」
『お怪我は？何か拭くものを持ってきます』
「何？ツルサン？」
『そこ突っ込まないで』
キッチンへ走って、優衣から台拭きを受け取る。ソレを真司へ渡すと、叔母サンが私の名前を呼んだ。
「ちょっと！Aちゃん！優衣！」
『なんです？』
「何？叔母さん…」
優衣も奥から出てきて、私達三人は額を付き合わせるように集まった。
叔母サンは言う。
「誰？」
「知り合い。確かお姉ちゃんの…」
『同僚？後輩？みたいな』
「あのさ、さっきの蓮とかいう目付きの悪い男よりずっといいじゃないの…」
「そんなんじゃないから！」
「Aちゃん、もしかして付き合ってたりすんの？っあ、まさかあの蓮とかいうやつと付き合ってんじゃないでしょうね」
『真逆。二人共良い友人です』
「あーら、そう？」
叔母サンはつまらなそうに言って、真司に目を向ける。彼は店員でもないのに必死に零れた紅茶の片付けをしていた。
彼の元に戻ろうとすると、腕が引っ張られて引き止められる。
「私の勘に、間違いはないわ。マメそうだし…愛想だっていいじゃない」
品定めをし続ける叔母サンに、優衣は呆れたようにため息をついた。
「お姉ちゃん、真司君案内してあげて。私、片付けしてくるから」
『分かった』
片付けをしてくれた真司に感謝をして、カウンター席に誘導する。
「店開けたんだ…Aちゃんは手伝い？」
『そ。いつも世話になってるからね』
「へー…あ、長居していい？原稿書きたいんだけど」
『嗚呼、昨日の？いいんじゃない？カウンターなら空いてるし、叔母サンも…』
振り向けば、叔母サンは満面の笑みでいらっしゃい、と言った。
うん、長居しても大丈夫そうだな。大歓迎らしい。
「叔母さん？」
『そ。正確には優衣と兄さんの、だけど』
「よろしくね」
「ハイ！ッあ、城戸真司です！二人には、いつもお世話になってます！Aさんとは、職場も同じで…」
「礼儀正しいじゃない…」
叔母サンは感心だわ…なんて嬉しそうに真司を見つめる。第一印象はかなりいいようだ。
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2022年9月24日 18時
