鶴は幸せを運ぶのか Ⅰ (ページ33)

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翌日。

『編集長。ようやく繋がりました。…ハイ、分かりました。明日の朝までにまとめておきます』

昨日の取材は思った以上に上手く行き、今日の取材に繋がった。結果、一連の事件に見事関連性を見つけ、記事にできる程の情報が集まったのだ。
記者の仕事は、この瞬間が一番楽しい。編集長への報告もつい声が弾んでしまい、余程嬉しかったんだなと笑われた。子供を褒める親のような調子で｢頑張ったな｣と言われたけれど、嬉しかったのでよしとしよう。

さて、編集長には記事にするのは明日で良いと言われたので、どうしたものかとバイクに跨る。頑張ったご褒美だそうだ。

とはいえ特に予定なんてない。ドライブにでも行くか…カフェにでも行くか…。
思案を巡らせていれば、不意に、電話がなった。

『！』

見れば、優衣からの電話だ。珍しい。
嬉しくなって、ワンコールもしないうちに出る。

『もしもし、優衣？』
「あっ、お姉ッ……！ッーー！ぅ、＿＿」
『…？！優衣？！優衣、どうしたの！』
「＿＿」
『優衣？優衣！』

ブツ、と、通話が切れる。

今の声は間違いなく優衣だ。だが突然、何者かに抑えられたかのように、声が途切れた。そして、微かに聞こえた呻き声。
その後は呼んでも応答が無く、通話が一方的に切られた。

優衣が何者かに襲われた？
誰に？
何のために？

ともかく、こんなことをしている場合じゃない。優衣を助けに行かなければ。

ヘルメットをして、バイクを走らせる。
向かうのは花鶏。あんな連絡が来たのだから十中八九花鶏には居ないけれど、闇雲に探すよりは良いだろう。

『優衣！』

花鶏に着けば、やっぱり優衣は居なかった。
無造作に置かれた優衣のエプロンに、不安が募る。

「A…！」

背後から聞こえた、声。