鶴は幸せを運ぶのか Ⅰ (ページ19)

今日:10 hit、昨日:15 hit、合計:14,040 hit

17 ページ19

「会社っていうのはね、友達の家じゃないのよ！倉庫でもないの！こんなに私物持ち込んで、大事な資料とか紛れたらどうするの？」

ふ、と編集長の机に視線を向ける。
編集長の机の上には…雑誌やら漫画やら…挙句の果てに着替えまで出てきた。…大量に私物を持ち込んでいる。

暇つぶしの雑誌やらは分かる。でも着替えは何のために置いてあるんだ。しかも一式ならまだしもパンツだけ。引き出しに剥き出しでパンツが入ってるってどんな状況？

彼は私と目が合って、それから気まずそうに目を逸らした。

「会社には必要最低限のモノしか置かない！社会人としての常識だし、できる人間の条件よ！」

令子サンは編集長の状況を知らず、真司に捲し立てる。しかし、編集長はまだいい方であった。

ガチャ、とドアが開いて、島田サンが入ってきた。そして彼女は、机の上のバカでかい水槽を持ち上げる。水槽と言っても水が入っている訳では無く、砂が敷きつめられていて、中にはイグアナのマリリンが居た。
OREジャーナルのマスコット、とかではない。完全に島田サンが飼っているイグアナ。
…マァ、私物だ。しかも生き物。

「今日から給湯室が君のお家だからね」
『……開けましょうか？』
「うん、お願い」

両手が塞がった島田サンの為にドアを開けると、彼女はマリリンに｢あったかくしようね｣と話しかけながら給湯室へ向かっていった。

それを社員全員で見送って、微妙な沈黙が流れた後。

「…分かった？！」

令子サンは真司にそう言った。

…令子サン…説得力ないです……。