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花鶏に着いて、優衣を二回のソファに寝かせる。コートを布団の様にして掛けてやって、顔を覗き込めば…優衣は、泣いていた。
『…優衣…』
数秒置いて、優衣が目を覚ます。
「バレた…？歩くの面倒くさいから、狸寝入り…」
『…気付かなかった。策士だね、優衣』
「ふふ、」
優衣が体を起こして、コートが落ちる。ソレを拾い上げると、優衣は涙を拭って話し出した。
「お兄ちゃんの免許証が見つかったって話…嘘だったんだね」
『…うん』
「あの人もライダーなの？」
『……』
口を噤めば、優衣は蓮へ問いかける。
「戦うつもり？」
蓮は答えずに、踵を返して部屋を出ていく。優衣が立ち上がって追いかけた。
「蓮！」
「…いや、」
戦わない、という意味なのだろう。
嘘だ。蓮はこれから、戦いを仕掛けに行く。
これ以上、長引かせないために。
『…優衣』
「お姉ちゃん、」
『おいで』
蓮がくぐったドアを見詰め続ける優衣を、ソファに座るよう促す。自分の隣を二回叩けば、優衣は素直にそこに座った。
『電話、ありがとうね』
「…え？」
『あの時さ、私に連絡くれたでしょ。お姉ちゃん、って…』
「…うん。あの時、少し…嫌な予感がして。お姉ちゃんなら、何かあっても、助けてくれるって思ったから…」
『…そっか。一番に、私を思い出してくれたんだ。嬉しい』
優衣の頭を撫でて、それから抱きしめて。あやす様に背中を叩く。
しばらくそうしていれば、優衣が涙を零したのがわかった。
「ごめん…おねえちゃん…」
『いいんだよ。泣きたい時は、いっぱい泣いて』
「…お兄ちゃんに会いたい。せめて、今どうしてるのか知りたい。お兄ちゃんが、今、生きてるって、分かるだけでもいいから…」
『…うん』
「あいたい…」
優衣が私の背中に腕を回した。段々と力がこもって、しゃくりあげるのが聞こえる。
『…会えるよ。絶対会える。お兄ちゃんは、今も優衣の幸せを祈ってるよ』
「なんで分かるの…？」
『だって、私が兄さんならそうするもの』
顔を上げた優衣の涙を拭って、もう一度抱きしめる。
『絶対会えるよ。また会えたらその時は、三人で幸せに暮らそうね』
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2022年9月24日 18時
