鶴は幸せを運ぶのか Ⅰ (ページ25)

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「何をしているんです」
『！』
「何だぁ？」

背後から、声が聞こえた。
前方に気を取られていた私は驚き、後ろを振り向く。
そこに居たのは一人の男性。背は蓮と同じくらいで、スーツの上にコートを来ていた。

酔っ払い達は明らかに不機嫌になり、詰め寄ってくる。男性は私を庇うように進み出た。

「なんの用だよ、ぶっ潰すぞぉ？」
「誰だよお前ぇ、」
「嗚呼、失礼。申し遅れました」

その人はコートの内ポケットに手を伸ばす。

「私、こういうものです」

取り出したのは、警察手帳だった。

「……！」

酔っ払いがその赤い顔を真っ青にし、そそくさと退散する。
彼はため息をついてから、こちらに向き直った。

「大丈夫でしたか？」
『は、い。…ありがとうございました』

男性…もとい刑事サンは、気にしないでくださいと言って笑う。それから口を開こうとして…思い出したように続ける。

「須藤雅史と言います。職業は刑事を」
『あぁ…鶴見Aと言います。OREジャーナルという会社で、記者兼経理を』
「鶴見Aさんですか。Aさんとお呼びしても？」
『勿論』

名刺を取り出して渡せば、ありがとうございますと彼は受け取った。安心できるよう、自己紹介をしてくれたらしい。