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深海王に追いついた時、もう既に避難シェルターは破壊済み。ジェノスはやられていて、加勢した無免ライダーも立つのがやっとの状態であった。
「俺がお前に勝てないなんて事は、俺が一番よくわかってるんだよぉッ……！！」
それでも、彼は立ち向かうんだ。
「それでも、やるしか、ないんだ。俺しかいないんだ！」
だって彼はヒーローだから。
「勝てる勝てないじゃなく、ここで俺は、お前に立ち向かわなくちゃいけないんだ！」
「訳わかんない事言ってないで早くくたばりなさい。」
深海王の体躯は、先程よりも大きくなっていて、ボロボロの彼に勝機がないのは一目瞭然。それでも誰もが彼に思いを寄せて、声を張り上げる。
頑張れ、ファンだ、頼りなんだ。
誰もが同じ思いで声をあげる。
ねぇ、やっぱり、ヒーローってそういう人の事を言うんだね。
「ぬぅおおおおおおお！」
立ち上がる無免ライダー。そこに。
ーゴキッ
深海王の、最後の一撃。
「無駄でしたぁ。」
『無駄じゃない！』
「…あら。」
体の震えは止まらない。今すぐにでも泣きそうだ。
「さっき逃げた意気地無しじゃない。」
『…っ、そうだよ！』
そうだよ。反論なんてできないし、するつもりもない。
勝てるわけが無い。ここで無免ライダーが戦ってるってことは、既にS級ヒーローのプリズナーさんとジェノスですら負けてるんだ。
「なんで戻ってきたのかしら。せっかく見逃してあげたのに。」
『……怖いし、勝てるわけ、ないけど。私はこれでも、ヒーローなんだ！』
武器は、道中拾った鉄パイプ。
「うそ、ヒーロー？！」
「頑張って！ヒーロー！」
「知ってるあの人！S級ヒーローだよ！」
「お願い！勝ってくれ！」
声援に、心が痛む。
ごめん、ごめんなさい。私はさっき、逃げたんだ。あなた達を見殺しにしようとした。見て見ぬふりをするところだった。
ごめん、頑張る。頑張るよ。
鉄パイプを握りしめて走り出す。
弱点なんて分からないし、高く跳んで頭を殴った。パイプがめり込み、深海王が吹き飛ぶ。
『っ、らぁ！』
すかさず連撃。多分今は、不意打ちを食らって驚いているだけだ。すぐに対応してくる。だから今は、できる限りのダメージをっ！
『ぅ、ぁああ！』
少しでも、少しでも！
私は、ヒーローだろ！
ーゴッ
「はぁい、残念。」
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2022年9月5日 0時
