秋山蓮 END ページ7
花鶏とは、私の叔母が経営している喫茶店だ。
そこには妹の優衣も暮らしていて、私にとってソコは、第二の家のような存在である。
「お姉ちゃん！」
『優衣』
「まだお昼なのに珍しいね」
『丁度近くで取材だったから』
それだけでは無い。花鶏はかつて叔母サンや優衣は勿論、ライダーとして戦っていた真司や蓮、そして私までもが、生活を共にしていた場所なのだ。
最初は喧嘩が絶えなかった私達が、ひとつ屋根の下で寝食を共にし、時に戦いのことを忘れて笑い合い…結局喧嘩は絶えないままだったけれど、家族のように日々を過ごした思い出の場所である。
「あらAちゃん！いらっしゃい」
『こんにちは、叔母サン』
「何にする？」
『ンー…じゃあ、アールグレイで』
しかしこのリセットされた世界に、そんな過去は存在しなかった。叔母サンも優衣もライダーバトルはおろか、共に過ごしたハズの真司や蓮の存在すら知らないのだ。
私はソレを理解してからというもの、二人に記憶を思い出してもらおうとはしていない。リセットされる前の世界のことは、周囲の人間の前で、何一つ口に出さないと決めたのである。
それは偏に、ライダーバトルのこともミラーモンスターのことも、知らないに越したことはないと思ったからだ。
どこまでも残酷な戦いの日々は、優衣や叔母サンにとって思い出したくもない忌むべき記憶だろう。そしてソレは、ライダーバトルに関わった全ての人間に当てはまるハズだ、と。
だから私は、この記憶には蓋をして、掴み取った平和な世界の中で墓場まで持っていこうと決めたのである。
だがマァ、そんな日々をずっと続けていると、少々寂しくなったりもするものだ。
『じゃあ…そろそろお暇しようかな』
「もう？」
『一応この後会社に戻らなきゃならなくて。急ぎじゃないけど、あんまり長居すると帰りたく無くなるから』
「そっか…じゃあ、また来てね」
『勿論』
自身の記憶では確かに存在する共に過ごした日々…それを忘れられているというのは、中々に寂しいものでもある。
それに、記憶を持っているのが自分だけとなると、その記憶が本当か嘘か分からなくなってくるのだ。事実だと何度言い聞かせても、その裏付けが存在しないからである。
それもやはり寂しいし…何より、心細い。
マァ、だからといって、無理に他人の記憶を引っ張り出したくはないけれど。
花鶏を出た私の体が突如前方に現れた黒い何かにぶち当たったのは、そんな思考が脳裏を横切った時だった。
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神崎(プロフ) - 面白くて一気読みしました！そしてめっちゃ感動しました。龍騎の作品を作ってくれてありがとうございました！ (2月11日 16時) (
レス) id: 225664e10d (このIDを非表示/違反報告)
麗大(プロフ) - 最高に面白かったです…！一気読みしてしまいました！！皆が幸せになれて良かった…！！ (2月7日 0時) (レス) @page50 id: c06fac28a8 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - こんばんは。完全完結おめでとうございます！もう全部素晴らしかったです…！設定からラストまで本当に好きです。なちなちこ。様、約一年、お疲れ様でした！！ (8月14日 21時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年6月18日 12時
