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「…お前には酷な話かもしれない。あの家はお前にとって…良い思い出ばかりじゃないハズだ。だから勿論、あの家にこだわるつもりは無い」
『…』
「ただ、もう一度、三人で」
全て終わったら、また三人で暮らそう。
今度こそ、幸せに。
『…うん』
嗚呼、そうだ、私は。
ライダーバトルが始まったあの日から、兄の、この言葉を頼りに進んでいた。
『いいよ、いい。あの家に住もう』
「…いいのか」
『嫌な思い出があるのは否定しないけど、あそこには、兄さんや優衣との幸せな思い出も山程あるから』
「怖くないのか」
『うん。それに、これから三人で住むんなら、嫌な思い出なんて幸せな思い出で上塗りできるでしょ』
そうだな、と兄さんは言って、もう一度私を抱き締めた。
こんなにも幸せなことがあるだろうか。始まりの夜にした約束を、数年、数十年…はたまたそれ以上の時を経て、兄は叶えてくれたのだ。悲しみも後悔も、何もかもが報われたように思えてくる。
「お前は案外、よく泣くな」
『…兄さんと居るからだよ』
「俺のせいか」
『違う。兄さんと居ると安心するから』
「…そうか」
あんまり、人前では泣かない方だとは思う。というより、そうあるように心掛けている、というのが正しい。
しかし兄の前では寧ろ涙脆くなるのは…彼の胸の中で泣いていた日々を、体が覚えているからかもしれない。今さら直せるとは思えないし、直す気もないのだけれど。
『兄さん、愛してるよ』
「…どっちだ」
『どっちも』
愛してる。
その言葉は兄弟としてか、いずれか。後者は、マァ、あまり深く答えるのも野暮というものだろう。
「お姉ちゃん！お兄ちゃん！」
こんな幸せがあっていいものなのだろうか。
疑い深くなってしまうけれど、きっとこれは、終わりの見えないライダーバトルを乗り切ったことへの、神様からのご褒美だ。
『今行く！』
大好きな兄の手を引いて、妹の元へ走り出す。
眩いばかりに煌めく海面は、これからの日々を暗示しているかのようだった。
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神崎(プロフ) - 面白くて一気読みしました！そしてめっちゃ感動しました。龍騎の作品を作ってくれてありがとうございました！ (2月11日 16時) (
レス) id: 225664e10d (このIDを非表示/違反報告)
麗大(プロフ) - 最高に面白かったです…！一気読みしてしまいました！！皆が幸せになれて良かった…！！ (2月7日 0時) (レス) @page50 id: c06fac28a8 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - こんばんは。完全完結おめでとうございます！もう全部素晴らしかったです…！設定からラストまで本当に好きです。なちなちこ。様、約一年、お疲れ様でした！！ (8月14日 21時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年6月18日 12時
