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「どうかしたか」
『優衣に貝殻貰ったんだよ。傷付けるのも嫌だししまっておこうと思って』
「貝殻？」
す、と兄に貝殻を乗せた手のひらを差し出せば、彼は微かに目を見開いた。
しかし直ぐに｢良かったな｣とだけ言って視線を戻したので、私は車のドアを開けて、ひとまず貝殻をダッシュボードへ置く。
それからドアを閉めて、兄さんと同様に車を背にして海の方を見遣った。
別に優衣の元へ戻れば良かったのだけれど、何だかそんな気分にならなかったのだ。誰かと遊んでたから、という思考は、多分、理由付けに他ならない。
「A」
『…何？』
「…悪かった」
唐突に兄が放ったのは謝罪の言葉だった。
その意味として私が導き出したのは、ライダーバトルに関するもの。探せば他の理由なんてありそうなものだが、紫の貝殻によって記憶が掘り返されたばかりの私には、その思考は至って普通のものだった。
『いいよ、そんなの。もう過ぎたことなんだから』
言えば一瞬、兄の呼吸が不自然に止まる。
多分、驚いたのだろう。言ってはみたものの、私が覚えていると思ってなかったのかもしれない。実際私も覚えているのは自分だけだと思っていたし、今まで覚えているような素振りを見せてはこなかった。兄が驚く理由は十分に理解出来る。
そして、私が覚えていないと考えて尚謝罪の言葉を零す兄は、やはり変なところで義理堅くて、優しい人間なのだな、と思った。
「覚えてたのか」
『うん』
「いつからだ」
『…家に警察が来た日、覚えてる？あれが最初。その後は全然思い出せなくなったんだけど…大きくなるにつれて記憶が戻ってきた、というか』
全部思い出したのは最近だよ。そういえば、兄は納得の声を漏らした。
警察が来た日、というのは、私が無我夢中で交番に駆け込んだ日だ。その後すぐに警察が動いて、兄さんと優衣が閉じ込められている家にやってきたのだと、成長してから叔母さんに聞いた覚えがある。
「ありがとう。…それから、悪かった」
『…何が？』
「色々、だな」
感謝と謝罪。
前者は恐らく、リセットされた今の世界についてだろう。
記憶が戻って直ぐに行動を起こしてくれたおかげで、優衣は死なずに済んだ。お前が優衣の傍に居てくれるから、俺は安心してアメリカで研究を進められる。
その言葉に滲むのは安堵や喜びといったプラスの感情で、受け取る身としては素直に嬉しいものである。
しかし謝罪の意に関して滲むのは、深い後悔の念だった。
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神崎(プロフ) - 面白くて一気読みしました！そしてめっちゃ感動しました。龍騎の作品を作ってくれてありがとうございました！ (2月11日 16時) (
レス) id: 225664e10d (このIDを非表示/違反報告)
麗大(プロフ) - 最高に面白かったです…！一気読みしてしまいました！！皆が幸せになれて良かった…！！ (2月7日 0時) (レス) @page50 id: c06fac28a8 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - こんばんは。完全完結おめでとうございます！もう全部素晴らしかったです…！設定からラストまで本当に好きです。なちなちこ。様、約一年、お疲れ様でした！！ (8月14日 21時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年6月18日 12時
