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「俺、あの時…Aさんに、好きだって、伝えようと思ったんです」
あの時。
それが指すのはきっと、ライダーバトルが終結したあの日…彼の死を、黒だけの空間で見送った瞬間のことだ。
覚えがある。｢俺…｣と彼が控えめに何かを切り出そうとして、しかしソレと同時に彼の体が消えようとしたから、私は咄嗟に、その言葉を遮ってしまったのだ。
「でも、先生とか城戸さんとか…他のライダーの人達みんな、きっと…Aさんのことが好きで。結局…言えず終いになって」
私があの時遮ったその言葉は、あまりにも真っ直ぐな愛の言葉だった。
その言葉が腑に落ちたのは、彼の気持ちに薄々勘づいていたとか、そんなモノでは断じてない。
「ずっと考えてたんです。俺が黙っていれば、Aさんや先生が幸せになる…それなら、俺はそれでいいんだって。…殆ど、言い聞かせてました」
その言葉は、腑に落ちたというよりも、望んでいたモノに合致した、というのが、きっと正しいのだ。
やっと気づいた。今この瞬間、ようやく気付くことが出来た。
調子がいいとか流されやすいとか、そんなふうに揶揄されたって構わない。こんな状況ではそう思われたって仕方ない。しかしこの気持ちは、一時の気の迷いとか、そんな薄っぺらいモノでは断じて無いのだ。
「でも、どうしても無理なんです」
きっと、初めて彼の優しさに触れた時から惹かれていて、しかしあの激動の中で、心の奥深くに追いやられていた。
「好きです。…Aさん、俺と、お付き合いしてくれませんか」
何の枷も無くなった今、その言葉は一切の隔たりも無く私の心に染み込んだ。
それならば、私が返す言葉にだって、何の裏も保身も要らないハズだ。
『…はい』
彼の目が小さく見開かれて、それから、胸中を象徴するかのように柔らかく細められる。
『こちらこそ、よろしくお願いします』
缶から離れた左手の指先が、彼のソレによって掬い上げられた。ソレを、ほんの少し力を入れて握ってみれば、それより更に小さな力で同じように握り返される。多分、力加減を測りかねているのだろう。
視線を持ち上げて彼の顔を覗き込めば、ほんの少しだけ赤かった。私の頬も同じような色になっていることは、ジワジワ上がる自らの体温から察することができる。
年甲斐もなく初心な反応をしていることに照れくさくなって、ソレを誤魔化すように、私達は小さく笑った。
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神崎(プロフ) - 面白くて一気読みしました！そしてめっちゃ感動しました。龍騎の作品を作ってくれてありがとうございました！ (2月11日 16時) (
レス) id: 225664e10d (このIDを非表示/違反報告)
麗大(プロフ) - 最高に面白かったです…！一気読みしてしまいました！！皆が幸せになれて良かった…！！ (2月7日 0時) (レス) @page50 id: c06fac28a8 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - こんばんは。完全完結おめでとうございます！もう全部素晴らしかったです…！設定からラストまで本当に好きです。なちなちこ。様、約一年、お疲れ様でした！！ (8月14日 21時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年6月18日 12時
