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目的地に着いたんだと脳の隅で思考したのは、余裕があるとかそんなんじゃない。寧ろその真逆で、あまりにも余裕が無いから、殆ど現実逃避のように他の思考を無意識のうちに行っているからだ。
「俺と、付き合ってください」
脳内はぐちゃぐちゃで、落ち着きなんてものは微塵も残っていない。
でも、それでも…痛いくらいに高鳴る自分の胸が、そのまま、彼の気持ちへの答えだと思ったのだ。
『…こちらこそ』
「じゃあ、」
『うん。私も好きだよ。色々、ごめん。それと…ありがとう』
ライダーバトルに巻き込んだこと、幸せを奪ったこと、一度、苦しい最期を迎えさせたこと。
私を好きだと言ってくれたこと、忘れないでいてくれたこと、リセットされたこの世界で、再び、私を見付けてくれたこと。
積み重ねた全てを込めて伝えた、謝罪と感謝の言葉。
その真意が伝わったかは分からないけれど、彼が嬉しそうに笑っているから、きっとそれでいいのだ。そんなことを思いながら車を降りて、上機嫌で店内へと向かう彼の横顔を見ながら、唐突に与えられた幸せを噛み締める。
「俺、もっともっと頑張るから。そしたらAちゃん、いずれ大企業の社長夫人だからね」
『…言っとくけど、仕事辞めるつもりはないよ？』
「分かってるよ！俺、Aちゃんの仕事してる姿好きだもん」
仕事のために沢山努力してるの知ってるし、何より今日取材受けて、本当に一生懸命で、仕事のこと好きなんだってことが分かった。一応知り合いなのにそんな素振り見せないで、Aちゃん、プロそのものだった！俺も頑張らないとなって気になったし、Aちゃんみたいに仕事好きになりたいって思ったもん！楽しんで仕事するって、やっぱ憧れちゃうなぁ！
聞き覚えのある言葉たちだな、なんて、少し口角が上がってしまう。
不快感は一切なくて、浮かべた笑みは勿論嘲笑では無い。懐かしさと、純粋に、褒められたことへの嬉しさから成る笑みだ。
『相変わらず口が上手いね』
「本心だよ」
『知ってるよ』
一度は奪われた、奪うことになってしまった…彼が享受すべきだった当たり前の幸せ。
ソレを、今度は、私が与えることが出来たなら。
「俺、今、すっごく幸せ」
浮かんだ心からの願いは、きっと叶えることが出来るハズだ。
根拠なんてないけれど、彼の笑みを見て、私は痛烈にそう思った。
『私も』
だから私は、精一杯の笑顔でそう返して、街灯に照らされる彼の背中を追いかけたのである。
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神崎(プロフ) - 面白くて一気読みしました！そしてめっちゃ感動しました。龍騎の作品を作ってくれてありがとうございました！ (2月11日 16時) (
レス) id: 225664e10d (このIDを非表示/違反報告)
麗大(プロフ) - 最高に面白かったです…！一気読みしてしまいました！！皆が幸せになれて良かった…！！ (2月7日 0時) (レス) @page50 id: c06fac28a8 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - こんばんは。完全完結おめでとうございます！もう全部素晴らしかったです…！設定からラストまで本当に好きです。なちなちこ。様、約一年、お疲れ様でした！！ (8月14日 21時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年6月18日 12時
