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『本日はありがとうございました』
「こちらこそ。あ、出口まで送りますよ！」
結局何事もなく取材は終わり、その場は解散の運びとなる。
取材がが終われば佐野と顔を合わせることは二度と無いかもしれない。そう思った途端、"どうしよう"が頭の中を埋め尽くした。
このまま帰るべきなのだろうか。何か一言、覚えてるかどうか聞いた方がいいんじゃないか。もしかしたら彼だって、こちらが覚えているか分からないから、黙っているだけかもしれない。
…なら。
『…覚えて…ます、か』
私は帰りのエレベーターの中、その扉が開く直前に、何とか言葉を捻り出した。
彼が覚えていなかった時は、忘れてくださいとでも言えばいい。人違いだったとでも言えば良い。このまま帰ってモヤモヤし続けるよりは、玉砕覚悟でストレートに聞いた方がいいだろう。
私はそんな思考の元、真正面から彼に問い掛けたのだ。こういう時の決断力は、我ながら持っていて良かったと思う。きっと仕事柄…更にはライダーバトルに翻弄される中で、自然に身に付いた自身の強みだ。
「…」
私の言葉を受けた彼はこちらを見て、目を瞬く。
嗚呼、忘れているのか。心底驚いたという様子の彼に、私はその結論に行き着いて。
「…良かったぁ…」
次の瞬間彼が見せた、身体中の力が抜けたような表情。ソレによって私は、行き着いた結論が間違っていたと理解した。
覚えている。彼はきっと私のことを…リセットされる前の、ライダーバトルのことを覚えているのだ。
「Aちゃん」
『…佐野、』
「覚えてるよ、勿論。全部覚えてる。でももしAちゃんが覚えてなかったら下手なこと言えないじゃん。だから…」
ひとまず今日は僅かでも繋がりを作って、後々会った時に、今日の出来事を話のキッカケにするつもりだったと。もう一度一から、今度はゆっくり仲良くなるつもりだったと。
きっと昔の記憶を思い出しながら、彼はぽつりぽつりと、懺悔のように胸中を語った。
「ねぇ。もう夜だし…どこか食べに行かない？」
『良いけど…急に大丈夫？社長なのに』
「大丈夫だって。あーでも…店予約してないから、ちょっと待って欲しいんだけど…」
『別にかしこまらなくたって…ホラ、あの時みたいにファミレスとかでいいんじゃない？』
「…今度は俺が奢るからね」
『いや…借りは返してもらったし…』
「俺が奢るから」
『…分かったよ』
別れたくないと互いに思ったのは、きっと、スグには語り尽くせない心の内があったからだ。
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神崎(プロフ) - 面白くて一気読みしました！そしてめっちゃ感動しました。龍騎の作品を作ってくれてありがとうございました！ (2月11日 16時) (
レス) id: 225664e10d (このIDを非表示/違反報告)
麗大(プロフ) - 最高に面白かったです…！一気読みしてしまいました！！皆が幸せになれて良かった…！！ (2月7日 0時) (レス) @page50 id: c06fac28a8 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - こんばんは。完全完結おめでとうございます！もう全部素晴らしかったです…！設定からラストまで本当に好きです。なちなちこ。様、約一年、お疲れ様でした！！ (8月14日 21時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年6月18日 12時
