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『…は、』
その先に見えたのは、傘も差さずに佇む人影。
ソレは私よりずっと上背があって、しかし猫背気味でこちらを見詰めていた。髪から滴る雨粒も気に停めず、じっと動かずに立っていたのである。
初めは暗闇のあまり分からなかったのだ。幽霊かなにかの類かしら、なんて、似合わない思考すらしてしまった。けれど目を逸らさずにその正体を暴こうと試みて…そうして、脳の中に飽和するぼやけた輪郭がハッキリした途端、私は息を飲んだのである。
なぜってその正体は、今まさに、私の脳裏を埋めていた人物であったのだ。
英雄を夢見てライダーバトルに身を投じ、傷付け傷付けられ、大切な人間を何度も手にかけて。最期には見ず知らずの親子を庇って命を散らし…死して、英雄となった人。
仮面ライダータイガ。
『…東、條』
東條悟、その人だった。
『な、』
声が掠れたのは、現状を理解しきれていないからだ。
『何でココに…ッてか傘は！？風邪引いたらどうするの…ッ、』
覚えていないかもしれない、なんて思考が展開される前に、私は彼に駆け寄って、その頭上へ自らの傘を差し出す。
彼は抵抗を示さなかった。寧ろ小さく｢Aちゃん｣なんて私の名を呼ぶものだから、私は彼に覚えられていたことに安堵して、もう一度、｢どうしたの｣と理由を聞き出すことを試みる。
「僕…どうしてもAちゃんに会いたくて。Aちゃんと会った所に行けば会えるかもしれないから…全部、行ってみて」
共に語らった公園、ライダーバトルの始まりの場である401号室。香川サンを殺した場所に中村サンを殺した場所、ライダーによる大混戦の舞台となった波止場まで。
そうして彼は最後に、この場所に足を運んだと言うのだ。
「ようやく、会えた」
彼の酷く冷えた手が、私の、傘の柄を握るソレに重なる。
その温度に、彼とこの場で出会った冬の夜を思い出した。感情の読み取れない瞳も、冷えきった体も、顎から落ちる水滴も…あの夜見た壊れかけの彼の姿に重なって、久しく感じていなかった恐怖が湧き上がってくる。
「ねぇ、大好きだよ、Aちゃん。ずっと一緒に居たいかもって、思うくらい…」
キシ、と骨の軋む音と共に、私よりふた周りは大きな彼の手に力が篭もった。
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神崎(プロフ) - 面白くて一気読みしました！そしてめっちゃ感動しました。龍騎の作品を作ってくれてありがとうございました！ (2月11日 16時) (
レス) id: 225664e10d (このIDを非表示/違反報告)
麗大(プロフ) - 最高に面白かったです…！一気読みしてしまいました！！皆が幸せになれて良かった…！！ (2月7日 0時) (レス) @page50 id: c06fac28a8 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - こんばんは。完全完結おめでとうございます！もう全部素晴らしかったです…！設定からラストまで本当に好きです。なちなちこ。様、約一年、お疲れ様でした！！ (8月14日 21時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年6月18日 12時
