芝浦淳 END ページ30
非日常。
それは足りなければ恋しくなり、ずっと続けば飽き飽きする…なんとも扱い難いモノだ。
しかし、私にとっては日常こそ最も愛しく、非日常は寧ろ苦手なモノですらあった。それはリセットされる前の世界で、非日常に翻弄され続けていたからである。
『編集長、今日の記事纏め終わりました』
「オッ、流石A！随分早かったじゃねェか」
『なんか今日調子よくて』
「Aちゃん！田村さんの電話番号って分かるッ？」
『田村サン…？嗚呼、取材先の。メモってあるよ』
「教えて！」
「つかそろそろ昼時だなぁ…出前でも取るか？」
「令子さんと城戸君、今取材終わって帰ってくるそうです」
「丁度いいじゃねェか。島田、二人に何食べたいか聞いてくれよ」
「はーい」
だからこそ、今私がOREジャーナルで享受している日常は、何よりも大切なモノなのだ。
小さなトラブルが付随する取材もあるけれど、そんなものはこの仕事であれば日常。何より、ライダーバトルに掻き回された過去を思えば十分平和な毎日だった。
しかし非日常とは、いつも唐突に訪れる。
「令子、真司！早かったなァ…って…アレ？」
日常の終わりを告げたのは、仕事場の扉が開く音だった。
その音を立てた張本人…開いた扉の向こうに立っている人物には確かに見覚えがあって、私は目を見開いたのである。
「あのー、どちら様で？ウチはセールスとかお断りなんですよねェ…」
心底面倒だという様子で連ねる編集長。
だが、その相手はセールスでもなければ、いつかのような凶悪脱獄犯でもなかった。
「A」
「…お前、知り合い？」
呼ばれた私の名前に反応して、編集長がこちらに問いかける。
しかし私は、彼の方へ視線を向けることすら出来なかった。目の前に佇む私の名前を読んだ男…その姿に視線が釘付けになって、動かすことも叶わなかったのだ。
思いもよらない、突如飛び込んできた現実は、咀嚼するのにそれ相応の時間を要したのである。
「やっと見つけた」
彼は言った。
それから、黙り続ける私に向け、｢もしかして忘れてる？｣なんていいながら怪訝な顔を向ける。答えはＮＯだ。しかしそれが、喉につっかえて出てこない。
「マァ、忘れたなんて言わせないけど」
片側の口角を軽く上げて、彼は言った。
その不敵な笑みは、普通の人間より長い月日が刻まれているだろう私の記憶に、ピッタリと一致したのだ。
『……芝浦、』
無理やり引き摺り出されたように、ようやく、私の口から彼の名が紡がれた。
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神崎(プロフ) - 面白くて一気読みしました！そしてめっちゃ感動しました。龍騎の作品を作ってくれてありがとうございました！ (2月11日 16時) (
レス) id: 225664e10d (このIDを非表示/違反報告)
麗大(プロフ) - 最高に面白かったです…！一気読みしてしまいました！！皆が幸せになれて良かった…！！ (2月7日 0時) (レス) @page50 id: c06fac28a8 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - こんばんは。完全完結おめでとうございます！もう全部素晴らしかったです…！設定からラストまで本当に好きです。なちなちこ。様、約一年、お疲れ様でした！！ (8月14日 21時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年6月18日 12時
