手塚海之 END ページ25
お気に入りの喫茶店がある。
花鶏ではない。
よく使う道中にあるワケでも、知り合いが働いているワケでもない。特段好きなメニューがあるとか、コーヒーにこだわりがあるワケでもなかった。
それでも幾度となく足を運ぶのは、無論、それ相応の理由があるからだ。
「いらっしゃいませ」
座るのはいつも、入って正面のカウンターの、一番端の席である。
初めて立ち寄った時は知る由もなかったが、この喫茶店は、大きな窓から見える色とりどりの花々が人気らしい。だから多くの客は窓際のテーブルに座り、ソレから離れたカウンター席に、いつも人はまばらだった。その端ともなれば更に人は少なく、ソコは私の特等席であったのだ。
「ご注文を伺います」
『コーヒーと…ガトーショコラを』
この喫茶店を思い出し足を運んでから、そろそろ半年が経過する。ほんの二週間前には、一緒に取材へ言っためぐみと共に訪れたりもした。
よく来るの？
マァ、月に一度二度くらいは。
結構来るんだぁ。好きなメニューでもあるの？
いや…美味しいことは間違いないけど、特には。
じゃあどうして？
…会いたい人が居るから。
ポツリと零したその言葉に、めぐみはプレゼントを前にした子供みたいに目を輝かせて、その内情を暴こうと試みた。
だがしかしソレは、彼女が望むような少女漫画さながらの恋愛物語ではない。会いたい人というのは言うなれば恩人であって、彼との物語の主は、血腥い、終わりのない命の奪い合いだ。
だから彼女には、ただ、昔世話になった人の行きつけだったんだよ、とだけ伝えた。
彼にとってこの喫茶店が行きつけかどうかなんて、私には知る由もない。というより、きっとそんなことはないのだろう。
あの時…彼と初めて出会った時も、彼は偶然立ち寄ったのだと言っていた。要するに、彼も私と同じく、あの日初めてこの店へ足を運んだのだ。だから行きつけの店、なんてのはとんだ見当違いのでまかせである。
それでも私が彼と出会う可能性をこの場所に見出しているのは、ソレしか手がかりがないからだ。
全てがリセットされた今、彼の居場所なんて分かるワケがない。彼に貰った、ずっと私の支えとなってくれていた指輪すら手元にはないから…ただ、私はここで彼を待つことしか出来ないのである。
リセット前の記憶を鮮明に、完全に思い出してはや半年。彼…手塚海之とは、すれ違うことすら叶わなかった。
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神崎(プロフ) - 面白くて一気読みしました！そしてめっちゃ感動しました。龍騎の作品を作ってくれてありがとうございました！ (2月11日 16時) (
レス) id: 225664e10d (このIDを非表示/違反報告)
麗大(プロフ) - 最高に面白かったです…！一気読みしてしまいました！！皆が幸せになれて良かった…！！ (2月7日 0時) (レス) @page50 id: c06fac28a8 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - こんばんは。完全完結おめでとうございます！もう全部素晴らしかったです…！設定からラストまで本当に好きです。なちなちこ。様、約一年、お疲れ様でした！！ (8月14日 21時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年6月18日 12時
