須藤雅史 END ページ22
エレベーターの1のボタンを押してから、開きっぱなしだった手帳をカバンへ仕舞う。
グォン、と体が下降する感覚がして、11に点っていたライトが、10、9、と左へと移っていった。
今日私が足を運んでいたのは、都内のとあるマンションである。
理由は仕事。昨夜起こった強盗未遂事件の犯人が住んでいた場所であるため、周囲の人々に彼について話を聞きに来たのだ。
犯人の普段の生活、ご近所付き合いの様子、友好関係などの大まかな情報を聞くことが出来、取材の成果としては上々だ。記事にする際困らない程度の文言は既に私の手帳に書き記されているため、私は意気揚々と仕事場への道を引き返していた。
ポーン、と軽やかな音がして、エレベーターの扉が開く。
カツカツ音を鳴らしながら廊下を直進し、エントランスへ続く道へ足を踏み入れようと角を曲がった時だった。
『！』
前方に見えた、大きな黒い影。
先を急いでいた私に直ぐに止まることは叶わず、そのままの勢いで、おそらく人間であろう黒い影に衝突する。
相手は私より余っ程背丈が高く、体幹も優れていたらしい。私の体は弾かれるようにして後方へ傾き、瞬間、無様にも尻もちをつく未来が脳裏に浮かんだ。
「すみません、お怪我はないですか」
『エッ、あ…大、丈夫です』
しかし痛みが自らを襲うことはなく、不思議に思った私は、反射で閉じていた瞳を恐る恐る開ける。
それと同時に気付くのは、腰の辺りに添えられた人間の手。転ぶのを阻止するようであるソレは、たった今ぶつかった目の前の人間によるものだった。
『ありがと、う…』
ありがとうございます、とだけ告げて、足早にその場を離れるつもりだった。
勿論相手に怪我があればそれなりの対応をするけれど、そうでないなら、転びそうになった挙句ぶつかった相手に助けてもらった、などという恥ずかしさからさっさと逃げ出してしまいたかったから。
しかしソレは叶わなかった。
『……す、』
須藤サン。
喉から流れ出るように紡いだその名前を、何とか途中で切り落とす。
言葉を形成しきってしまえば、彼にリセット前の記憶がなかった時、不審に思われるだろうと考えたからである。しかも彼の職業を鑑みれば、その程度は凄まじいモノであるハズだ。
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神崎(プロフ) - 面白くて一気読みしました！そしてめっちゃ感動しました。龍騎の作品を作ってくれてありがとうございました！ (2月11日 16時) (
レス) id: 225664e10d (このIDを非表示/違反報告)
麗大(プロフ) - 最高に面白かったです…！一気読みしてしまいました！！皆が幸せになれて良かった…！！ (2月7日 0時) (レス) @page50 id: c06fac28a8 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - こんばんは。完全完結おめでとうございます！もう全部素晴らしかったです…！設定からラストまで本当に好きです。なちなちこ。様、約一年、お疲れ様でした！！ (8月14日 21時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年6月18日 12時
