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『…どうやって生きてきたの？』
「あ？」
『会うことも、名前を聞くこともなかったから。そりゃお前の場合…名前聞かないに越したことはないんだろうけど』
「何だ、警察の世話になってた方が良かったか」
『真逆。でも…心配ではあったよ。お前が普通に生活してる姿、想像つかないからさ』
「…だろうな、」
浅倉は喉の奥でクツクツ笑って、私の体に巻き付けた腕の力を緩めた。
ソレに私も体の力を抜いて、しかし彼の腕の中から逃れられそうにはないので…諦めて、体重の半分ほどを彼の胸に預ける。
「別に、何も変わっちゃいない。あの時と同じ、殺したい程憎い親と弟だった」
彼が身の上を話し始めたのは、何かあったの、と、私が促したから。
親と弟から構成される彼の家族。ソレを、私は知っている。勿論その知識はリセットされる前の世界に限定されるけれど、それでも、彼の壮絶な半生を理解出来る程度のことは覚えていた。
幼少期に、家に火をつけて両親を葬ったこと。たった一人の弟を心の底から恨んでいたこと。その弟を十数年越しに殺した瞬間に至っては、私は目の当たりにしてすらいる。
ソレと同じ、殺したい程憎い家族。
けれど今の状況を鑑みれば、彼が家族に手をかけることはなかったのだろう。その事実に浮かぶのは、安堵と疑問だ。
「同じように殺そうと思った。家に火を付けて、全員。…だがその瞬間に、お前を思い出した」
『…私を？』
「その時思い出したのはお前の姿だけだ。それでも、殺す気が失せた。その後も、何かを壊そうとする度お前のことを思い出す。殺してやると思う度、少しずつ、お前のことを」
全て思い出したのは、昨日の夜だ。
だから会いに来たのだと、彼は言う。
「お前と二度と会えないなんざ御免だった。たとえ会えたとしても、警察の世話にでもなればお前はきっと俺のモノにならない。何なら、他の奴のモノになったっておかしくないだろ」
恵まれた、だなんて、決して言えない彼の半生。浅倉という人間が歪んだのは、勿論彼の生まれ持った性質はあれど、きっと周囲の環境の影響も大きい。
ソレに屈することなく、彼は再び相見えるまで耐えてくれたのだ。記者という仕事の中で彼の名前を聞かなかったのは、偶然や、ましてやリセットによって彼の状況が変化したワケではなかったのである。
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神崎(プロフ) - 面白くて一気読みしました！そしてめっちゃ感動しました。龍騎の作品を作ってくれてありがとうございました！ (2月11日 16時) (
レス) id: 225664e10d (このIDを非表示/違反報告)
麗大(プロフ) - 最高に面白かったです…！一気読みしてしまいました！！皆が幸せになれて良かった…！！ (2月7日 0時) (レス) @page50 id: c06fac28a8 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - こんばんは。完全完結おめでとうございます！もう全部素晴らしかったです…！設定からラストまで本当に好きです。なちなちこ。様、約一年、お疲れ様でした！！ (8月14日 21時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年6月18日 12時
