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生きているのであれば、ふとした時、ふとした場所で、すれ違うくらいのことは無いものかしら。記憶があるかも定かでないから会話がしたいなんて高望みはしないけれど…彼が生きているということが分かる程度の接触は出来ないものだろうか。
ほんの少しでも彼の姿が見られれば、きっと、不穏な単語を耳にする度に起こる心のざわめきも、少しくらい収まるだろうに。
そんな微かな願いが叶ったのは、考えてから一分と経たない、ほんの未来のことであった。
思いもよらぬ場所で、思いもよらぬタイミングで、思いもよらぬ方法で…その願いは願っていた以上のモノとなって、私の元に飛び込んできたのである。
『……ッ！』
それは一瞬のことだった。
ふと感じたのは、右腕を何かに掴まれる感覚。それが自らより大きな人間の手であると理解する前…いや、ほぼ同時に、私の体は手の伸びてきた先である路地裏へ、吸い込まれるようにして倒れ込んだ。
それに声を上げる間も、抵抗する間も無く。瞬間私に出来たことは、背中に走るだろう痛みをやり過ごそうと、目を瞑ることだけだった。
『…？』
しかしいつまで経っても、想像していた痛みが自らを襲うことは無い。
更には背中と首の辺りに人肌程度の温かさがあり、不思議に思った私は恐る恐る目を開けようとして…
「A」
その声に、ただ純粋な驚きのまま、目を見開くこととなったのだ。
『…え、』
視界に広がるのは、路地裏の出口から射し込む赤い光。
そしてそれより手前の、自らの体に巻きついている、見覚えのある蛇柄だった。
『…浅倉、』
「…会いたかったぜ、A」
体を捩って振り向けば、距離にしておよそ5センチの距離に、不敵な笑みを湛えた彼の顔がある。
記憶の中そのままの、つい先程まで私の脳内を占めていた彼の姿。喜びか安堵か判断のつかない感情が湧き上がり、それきり二の句が告げなくなった。言いたいことは、確かにあったハズなのに。
「ようやく会えた」
『…ぁ、』
「会いたかったぜ、A。分かるだろ」
『…』
「お前を思い出したその日から、ずっと」
首に回る腕に力が籠って、唸るような彼の声が、耳元で「なァ」と告げた。
ソレはまるで言葉を促すような声音で、きっと、私が黙り込んでいることへの不満を孕んでいる。
体に巻き付く彼の腕が、少し痛い。
浅倉、と名前を呼べば、彼は何だと呟いた。
その声は、先程と一転して酷く柔らかいものだ。
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神崎(プロフ) - 面白くて一気読みしました！そしてめっちゃ感動しました。龍騎の作品を作ってくれてありがとうございました！ (2月11日 16時) (
レス) id: 225664e10d (このIDを非表示/違反報告)
麗大(プロフ) - 最高に面白かったです…！一気読みしてしまいました！！皆が幸せになれて良かった…！！ (2月7日 0時) (レス) @page50 id: c06fac28a8 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - こんばんは。完全完結おめでとうございます！もう全部素晴らしかったです…！設定からラストまで本当に好きです。なちなちこ。様、約一年、お疲れ様でした！！ (8月14日 21時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年6月18日 12時
