北岡秀一 END ページ12
「A、お願いがあるんだけど」
手帳に書き込んだ単語の羅列を整理して、文章を組み上げてデスクトップに打ち込んでいく作業…記者としてスッカリ手馴れたソレを繰り返している最中、頭上から降ってきた声があった。
ソレは私の最も尊敬する上司、令子サンのモノである。
『何ですか？』
「あのね、私の代わりにとある取材に行って欲しいの。勿論、その分貴方の受け持ちを手伝うから…」
『成程、分かりました』
「…安請け合いし過ぎじゃない？」
『令子サンの頼みとあらば断りませんよ』
顔を上げた先にあった令子サンの顔は心底申し訳ないといった具合で、ダメ元で声をかけてきたのはだろうとは理解出来た。
仕事熱心な彼女が避けたいと言うのだから、それなりの理由があるのだろう。令子サンに捌けない仕事が私に捌けるのか、という疑問は残るが、彼女が私に無茶な仕事を与えるとは思えない。
安請け合い、とは言われたが、コレはそれなりの思考を経た上の答えである。
「私、まだ取材の内容も伝えてないのよ？」
『だって、令子サンが私に出来ない仕事を振るなんて有り得ないでしょう』
「…マァ、そうね」
それに、尊敬する人が自分頼ってくれるという事実は中々に嬉しいモノ。信頼されているのが分かるし、それだけ成長出来たのだと実感も得られるのだ。
二つ返事で了承したのは、胸中に芽生えた喜びも所以である。
『で、何の取材ですか？』
「…帯金物産の記者会見よ」
『それを…どうして私に？』
「その、帯金物産が雇ってるのがね」
『ハイ、』
「…北岡弁護士なの」
『…！』
エッ、と声を上げそうになって、何とか飲み込んで平然を装う。
何故って、令子サンの口から発されたその名前が、あまりにも聞き覚えのあるモノだったからだ。それもつい先日聞いたとかそんな程度のモノではない。数年、数十年…世界がリセットされる前からずっと刻まれていた、忘れるハズもない名前だったのである。
『北岡、弁護士。…えっと…何かあったんですか？』
「…正直な話ね、全く無いのよ。マァ黒い噂はあるけど正直噂に過ぎないくらいだし…本当に何も無いの」
『じゃあ何で』
「ソレが、分からないのよ。でも、ただ…何か、癇に障る感じというかね。失礼なのは分かってるんだけど…」
彼女が思いもよらぬ提案をしてきたワケ。
ソレを問えば、令子サンは珍しく、歯切れ悪く言葉を並べ立てた。
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神崎(プロフ) - 面白くて一気読みしました！そしてめっちゃ感動しました。龍騎の作品を作ってくれてありがとうございました！ (2月11日 16時) (
レス) id: 225664e10d (このIDを非表示/違反報告)
麗大(プロフ) - 最高に面白かったです…！一気読みしてしまいました！！皆が幸せになれて良かった…！！ (2月7日 0時) (レス) @page50 id: c06fac28a8 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - こんばんは。完全完結おめでとうございます！もう全部素晴らしかったです…！設定からラストまで本当に好きです。なちなちこ。様、約一年、お疲れ様でした！！ (8月14日 21時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年6月18日 12時
