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『…こちらこそ、ありがとう』
だから私も今まで全ての感謝を込めて、彼の胸に頭を寄せたままそう告げる。すれば、かれの腕の力がまた強まって、私も負けじと彼の背中に腕を回した。
『…恵里サンにも会いたいな』
「…嫉妬か？」
『真逆。優しい人だったから、会ってみたいの。心配なのもあるし』
「アイツに元の世界の記憶は無いぞ」
『分かってるよ。それでもさ』
それからいくらかの時間が経ち、私達は砂浜に座って取り留めもない会話をしていた。
まだ、会社での用事までに時間があったからだ。
気にする事は時間だけ。
それ以外の心配事は全て取り払われて、取るに足らない、平凡で平和な会話ができる。
ふと、成程、と思った。
あの時の私が…私達が求めていたのは、実の所、こんな平凡な時間だったのかもしれない、と。
「マァ、いずれにせよ会わせるつもりではあったが」
『そう？…何で』
「友人に恋人を紹介するのはおかしくないだろう」
『…そ、…ン、マァ…』
「いずれ式にも呼ばなくちゃならんしな」
『しき、』
「結婚式に決まってる」
『…、』
マァ、もし一つ心配事…というより困り事を上げるのだとすれば、彼のこの正直な物言いだろうか。
勿論悪いことではない。本心では嬉しいのも事実だ。ただ、私の知っている彼は｢勘違いするな｣だとか言って余計な確執を生み出すような、分かりづらい優しさを持つ…世間一般で十中八九ツンデレと称されるようなヤツだったのである。
それが急に照れる様子もなく口説き文句のような言葉を並べるものだから、対応に困るのも無理はないだろう。
『何か…調子、狂うんだけど…。今日、なんでそんなに素直なの…？』
「後悔したくないからな。あんな無意味なすれ違い、二度としてたまるか」
『…』
その言葉には、私自身も身に覚えがあった。
散々重ねたすれ違いの中で、起こった喧嘩は数知れない。けれど最期の時にはお互いの心の内を吐露しあい、その埋め合わせが出来たように思う。今思えば、あの何度も繰り返したすれ違いは、お互いがお互いを思っての行動だったんじゃなかろうか。
『そうだね』
きっと、この世界なら、今度こそ。
『ずっと、一緒に居ようか』
「嗚呼。…今度こそな」
それから、蓮の仲介の元再会した恵里サンに記憶の中と同じ暖かい笑顔で祝福され、ほんの少し泣きそうになるのは、そう遠くない未来の話である。
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神崎(プロフ) - 面白くて一気読みしました！そしてめっちゃ感動しました。龍騎の作品を作ってくれてありがとうございました！ (2月11日 16時) (
レス) id: 225664e10d (このIDを非表示/違反報告)
麗大(プロフ) - 最高に面白かったです…！一気読みしてしまいました！！皆が幸せになれて良かった…！！ (2月7日 0時) (レス) @page50 id: c06fac28a8 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - こんばんは。完全完結おめでとうございます！もう全部素晴らしかったです…！設定からラストまで本当に好きです。なちなちこ。様、約一年、お疲れ様でした！！ (8月14日 21時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年6月18日 12時
