・ ページ2
『で…どうしたの』
「エッ…どうしたのって、」
『なんかあったから誘ったんじゃないの？…何、もしかして何かやらかした？そんで経理買収しとこう、みたいな』
「なっ！違うって！」
『冗談冗談』
とは言いつつも、正直半分くらいは本気だ。急にここまで態度を変えられては、何かトラブルでも起こしたんじゃないかと不安にもなる。
しかし真司は心外だとばかりの表情を浮かべて、それから何か言いたげに口篭った。買収目的ではないらしいが、何か伝えたいことがあるのは本当らしい。
「…あのさ、」
そうして告げられた言葉は、私の目を見開かせるには十分なモノだった。
「…Aちゃんは…前世の記憶とかって、信じる？」
『……え、』
「夢にしか思えない話なんだけど…」
真司曰く、私と出会ったその日から毎夜、彼は前世の記憶としか思えない夢を見るようになったらしい。
ミラーワールドやモンスター、自らも変身する仮面ライダー、終わりのない戦いやその集結、そして自らが死ぬ瞬間まで。見覚えのないハズなのに、ただの夢のハズなのに…一度見た光景は忘れることなく、数珠繋ぎに記憶されるのだと。
「何言ってんのか分からないと思うけど…でも、絶対に夢なんかじゃなくて。…信じて貰えないかもしれないけど、」
『…信じるよ』
「…エッ…、」
『信じるというか…信じざるを得ないっていうか』
「じゃあ…Aちゃんも？」
『…ウン』
きっと、毎夜繰り返す悪夢のような記憶は彼にとって苦痛だっただろう。ライダーとして戦っていた時も散々苦しめていたと言うのに、リセットした世界でも尚苦しめたことに罪悪感が募る。
しかし｢思い出させてごめん｣と言えば、彼は｢思い出せて良かった｣と言った。ずっと忘れている方が嫌だった、と、彼は言ったのだ。
「…Aちゃん」
『何？』
「あの時も言ったけど…俺、Aちゃんのこと、好きだよ」
『ッ、…ン、ッぐ…、』
「だ、大丈夫…？」
『ケホッ…大、丈夫…』
何の予兆もなく、コップを口に付けた瞬間告げられた言葉。
あわや口内の水を吹き出しそうになり、必死で口元を手で覆って耐える。数回咳込めば、その原因を作った張本人が心配を顔に浮かべてこちらを覗き込んできた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 27人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
神崎(プロフ) - 面白くて一気読みしました！そしてめっちゃ感動しました。龍騎の作品を作ってくれてありがとうございました！ (2月11日 16時) (
レス) id: 225664e10d (このIDを非表示/違反報告)
麗大(プロフ) - 最高に面白かったです…！一気読みしてしまいました！！皆が幸せになれて良かった…！！ (2月7日 0時) (レス) @page50 id: c06fac28a8 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - こんばんは。完全完結おめでとうございます！もう全部素晴らしかったです…！設定からラストまで本当に好きです。なちなちこ。様、約一年、お疲れ様でした！！ (8月14日 21時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年6月18日 12時
