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『優衣！』
置き去りにされた荷物を代わりに持って、優衣を見失わないよう必死で追いかける。
そして元いた公園から大分離れた、車通りの少ない道路の上。ソコで優衣は唐突に立ち止まり、粒子となる手のひらに視線を向けて、それから糸が切れたように倒れ込んだのだ。
『優衣ッ、』
近寄って肩を揺すっても、優衣が意識を取り戻す気配は無い。
それに加え、体の消滅も止まる様子は無かったのだ。必死に力一杯抱き締めても、空へ昇っていく粒子は終わりが見えない。
『優衣…優衣ッ！』
底の見えない恐怖が身を襲い、とうとう一条、涙が零れたその時。
「Aちゃんッ！優衣ちゃん！」
「A！優衣！」
背後から声が聞こえたと、脳が認識するよりずっと前。
耳を劈く、ゴムとアスファルトが擦れる音と共に、目の前にトラックが現れた。
『……あ、』
曲がり角のスグ傍だったのだ。理解したところで、時は既に遅かった。突如見えたトラックは急ブレーキを掛けたようだが、この距離感では全くもって意味を成さない。
自らに起こる結末は一瞬にして想像出来、せめてもの抵抗として、私は優衣の頭を必死で抱き締めた。
そして、聞こえる衝突音。
コンクリートの破片が、地面へと転がり落ちる音。
しかしいくら待っても、自らに衝撃が降りかかることは無かった。
数秒経ち、不思議に思っておそるおそる目を開けると、目の前には斜めになって、コンクリートの柱にめり込んだトラックがある。ソレは確かに、先程私達に向かってきたトラックだったのだ。
ーキィィン…
混乱する頭に、答えを与えるように飛び込んできた音。
モンスターと同じ音だ。しかしソレは、モンスターが発したモノではなかった。
『兄さん、』
「……A」
いつの間にか、目の前に兄の姿があったのだ。
彼はゆっくりこちらに近付いて…目の前でしゃがみこんだ。
そうして、私の腕の中に眠る優衣の、粒子となって消えようとしている手に触れる。
「A、心配するな」
『……あ…』
「優衣は絶対に消えない。俺は、お前たちの幸せのためだけに存在している」
私は目を見開いて固まった。
止まる気配が無かった優衣の消滅は、兄さんが触れたことによって収まったのだ。
「お兄ちゃん…？」
『優衣ッ、』
「…お姉ちゃん…。今、お兄ちゃんが、」
『そう、今…！』
目を覚ました優衣に視線を向け、もう一度兄が居た場所を見上げた時。
『……兄さん？』
もう既に、兄の姿は見えなくなっていた。
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りんごキャラメル@さくらぁ - 《追記》しかしそんな馬鹿なトコがかわいくて好きです。 (5月19日 22時) (
レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - 多数決のシーン、好きです…(笑) 後から浅倉さんがゆっくり手をあげるトコとか。夢主ちゃんもあげましたか…やっぱり、真司くんは馬鹿なんですよ(←酷) (5月19日 22時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年5月16日 18時
