524 ページ40
客も何人か出入りして、至っていつも通りの花鶏。
私もいつも通り仕事をこなそうと思ったのだが、叔母サンは未だ私を心配してくれているようで、私は本日、かなりの頻度で休ませて貰っている。多少の申し訳なさもあるが、今日は人手も足りているようなので、私はソレに甘えているのだ。
「いらっしゃいま＿＿」
そして、数十人目の客が扉をくぐる。
その客の様に、叔母サンは挨拶を途中で切り上げた。何故ってその客は、通常では考えられない程の荷物を抱えていたから。一週間旅行でもするのかというくらい…いや寧ろ、引越しすると言っても納得できるような荷物量である。
しかし、私と真司はそれ以上の衝撃を得たハズだ。
『「編集長！？」』
なんとその客の正体が、我らがOREジャーナルの編集長･大久保大介であったからである。
「おお！Aに真司！ココかぁ真司の下宿先…！」
『ど、どうしたんですかこの荷物…』
「いやぁ、OREジャーナルなぁ…」
両手が塞がっている編集長は、開いた扉を足で閉め、その大量の荷物を床へと置いていく。
その異様な様に対する問いを、私は当然投げかけた。そして編集長がヘラヘラ笑いながら告げた、その答え。
「差し押さえられちまったぁ」
『……はァ！？』
驚きのあまり叫んだのは当然のことだろう。
しかも私は、OREジャーナルの経理担当なのだ。出勤していないとはいえ給料の割り振りなどは私がしているし、その仕事をする度会社の資金事情は洗っている。少なくとも前回の給料日前は問題は無かったし…まさか、こんな短期間で仕事場が差し押さえられるなんて、そんなこと…！
『何でそんな急に…！この前は特に問題なんて、』
「家賃･税金諸々。あーソレとこの間の怪物スクープの失敗！アレ痛かったなァ、ウン」
「じゃ、じゃあOREジャーナルはもう…」
「いやぁ？」
突然反省会を始める編集長に、私と真司とは呆然とするしか出来ない。
だって知らぬ間に、自らの職場が差し押さえられたというのだ。その事実から連想するのは、勤め先が倒産したのでは、なんていう最悪の仮説である。
しかし編集長は自信たっぷりに、
「俺とパソコンが一台ありゃあ、いつだってソコがOREジャーナルだ」
なんて、人差し指を立てて言い放つのである。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 13人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りんごキャラメル@さくらぁ - 《追記》しかしそんな馬鹿なトコがかわいくて好きです。 (5月19日 22時) (
レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - 多数決のシーン、好きです…(笑) 後から浅倉さんがゆっくり手をあげるトコとか。夢主ちゃんもあげましたか…やっぱり、真司くんは馬鹿なんですよ(←酷) (5月19日 22時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年5月16日 18時
