516 ページ32
とあるホテルの最上階から見下ろす、窓一面に広がる宝石箱のような夜景。ソレを存分に楽しめる窓際の席に、私は赤いドレスを纏って座っていた。
テーブルには高級感漂う料理が並べられ、更に奥には、私をココに連れてきた張本人･佐野満が座っている。
「どう？美味しい？」
『…そりゃあもう。…というかここまで来ると…申し訳ないんだけど』
殆ど拉致のように花鶏から連れ出された後、私はブティックやら美容院やらを連れ回された。そして今までにないくらい着飾った後、現在のレストランへ足を運んだのだ。
膝下丈のボルドーのドレスも、8センチのブラックのハイヒールも、耳や首元を彩るゴールドも…そのどれもが金額すら分からないのに、彼は全部持って帰って良いよと言う。
全くもって釣り合いが取れない。だって私は、ごく一般的なファミリーレストランで、昼食を一度奢っただけに過ぎないのである。
「それくらい、俺にとっては嬉しかったんだって！真逆本当に助けてくれるなんて思わなかったしさ！」
『アレで放っておいたら夢見が悪いでしょ…別に見返りなんて求めてなかったし』
「返すって言ったじゃん」
『正直、本気で期待してなかったよ。真逆こんなことになるなんて夢にも…』
「嗚呼ソレ…マァ、色々あって」
『色々？』
「ウン。実は俺、親父が社長だったんだけど…色々あって勘当されて…それで、お金なくて」
佐野は一瞬手を止めて、再び動かすと共に話し出す。
ソレは所謂身の上話だった。そして、私が抱いていた疑問を解消するモノでもある。
「でも急に、親父が死んだって。遺言で俺を社長にするって言ってたらしくて…なんか、よくわかんないまま社長になったんだよね」
聞いて、彼の変わりように納得する。
劇的に、スイッチを切り替えたかのように振る舞いや外見を変えたのは、彼の環境自体が、それくらい急激に変わったからだ。
「俺さ、毎日毎日、何でこんな人生なんだろって思ってて。それでライダーになったんだよ。…幸せになりたくて、ライダーになったんだ」
『…』
「でも、勝ち残るより前に、願い、叶っちゃって」
そういう時、どうしたらいいと思う？
視線を下に向けたまま、佐野は私に聞いた。
そんなの分かりきっている。願いが叶おうがなんだろうが、ライダーになったからには、向かう先なんて一つなのだ。
しかしソレは、わかっているからといって、そう簡単に口にできるものではなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 13人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りんごキャラメル@さくらぁ - 《追記》しかしそんな馬鹿なトコがかわいくて好きです。 (5月19日 22時) (
レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - 多数決のシーン、好きです…(笑) 後から浅倉さんがゆっくり手をあげるトコとか。夢主ちゃんもあげましたか…やっぱり、真司くんは馬鹿なんですよ(←酷) (5月19日 22時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年5月16日 18時
