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『え…』
信じ難いことだが、彼が社長になったというなら、あの劇的な変わりようも納得出来る。しかしそこに至るまでの経緯は全くもって想像つかず、私は処理落ちしたパソコンみたいな脳内で、つっ立っていることしか出来なかった。
「あらぁ〜…どうもウチの姪っ子と仲良くしてくれて！若いのに立派ねぇ〜！」
「いえいえ、そんな！」
「何か御用？」
「実はAさんを食事に誘おうかと」
「まぁ！良かったじゃないAちゃん！いつの間に立派な人捕まえて…」
『叔母サン、佐野はそういうのじゃ』
「いいからいいから」
『っちょ、叔母サン！』
「ホラホラ！楽しんできなさい！」
叔母サンは佐野のことを大層気に入ったようで、突然の外出にも関わらず嫌な顔ひとつしなかった。それどころか私を花鶏の外に追い出して、扉を閉めてから｢行ってらっしゃい！｣と元気に手を振る。
そんなことを言われても急すぎて何も用意していないし、財布もケータイも家の中だ。それどころか服装は執事服のままで…間違っても食事に行けるような状態では無い。
しかし、中に戻ろうとしても叔母サンが笑顔で扉の前に立ちはだかって、ソレは叶いそうになかった。叔母サンは面倒な勘違いをしていそうだし、脳裏に浮かぶのは"憂鬱"の二文字である。
「…迷惑だった？」
『嗚呼いや…ごめん』
小さくため息をつけば、佐野が心配そうにこちらを覗き込んだ。ソレに謝ったのは、仮にも食事に誘ってくれた相手にそんな態度を取るのは失礼だと思ったから。
否定すれば、彼は安心したように息を着く。
『ただ…こんな格好だし、財布とか何持ってないし…』
「…朝も思ったけど、どうしたの、その格好」
『叔母サンに着せられたの』
「ふぅん…でも、似合ってるからいいんじゃない？」
『…ありがと。でも、食事行けるような格好じゃないでしょ』
「いいよいいよ、そんなこと気にしないで。持ち物なんて何にも必要ないからさ」
『……え？』
私の心配をよそに、彼はあっけらかんと笑った。
そして私の腕を引いて、花鶏に乗り付けられた車へと誘導する。その車も、乗り込むことを躊躇う程に高級感漂うモノ。助手席には運転手らしき人が座っていて…やはり、社長になったというのは嘘では無いらしい。
「マ、そんな緊張しないでよ」
無理に決まってんだろ、なんて、脳内で悪態をつきながら。私はニコニコ笑う佐野の横で、移り変わる窓の外を眺めていた。
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りんごキャラメル@さくらぁ - 《追記》しかしそんな馬鹿なトコがかわいくて好きです。 (5月19日 22時) (
レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
りんごキャラメル@さくらぁ - 多数決のシーン、好きです…(笑) 後から浅倉さんがゆっくり手をあげるトコとか。夢主ちゃんもあげましたか…やっぱり、真司くんは馬鹿なんですよ(←酷) (5月19日 22時) (レス) id: 0caca33ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年5月16日 18時
