鶴は幸せを運ぶのか Ⅹ (ページ10)

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濡れた髪を拭き、服を着替え、ピアスを着け。人と顔を合わせないことは不可能となったため軽くメイクをし。
そして現在、いつも通りのテーブルを囲んで、私達は昼食を取っている。

流れる空気は気まずいなんてモンじゃない。
叔母サンでさえも口を開かないものだから、お通夜のような空気を脱却することは叶わないのだ。
無論私も口を開く気にはならず、無言のままモソモソと、食パンを口に運んでいると。

『……え？』

ダンッ！と両手をテーブルに叩きつけて、叔母サンが立ち上がった。
我々はポカンとして彼女を見詰め、一様に目を瞬かせる。脳内に浮かぶのは驚きと困惑だった。恐怖なんかでは無い。
もう少し時間があれば、怒っているかもしれない、なんて仮説も立てられたかもしれないけれど、その短い時間ではそこまで思考が行き着かなかったのだ。

食事の手を止めて叔母サンを見上げていれば、彼女は。

「ちょっとねぇ、外の空気を吸ってきなさい！」

そう言い放って、私達を無理やり立たせ、あれよあれよと玄関の方へと追いやった。
その剣幕は凄まじいモノで、口での抵抗なんて意味をなさない。｢何？！｣だの｢ちょっと！｣だのという非難を押しのけて、叔母サンは我々を花鶏から締め出そうとするのだ。

「アンタらはホントにグズグズ男らしくないアンタらも女らしくない！ホラとっとと行きなさい！」

どこに隠れているんだと思う程の力で背中を押され、私達は扉を潜り、太陽の下へと晒される。

「外は気持ちいいから！」

最後となる優衣が花鶏から足を踏み出すとガチャン！と扉が閉められた。
中に戻ろうとも扉の前には叔母サンが立ちはだかっていて、我々は完全に外へと追い出されることとなったのだ。

「しばらく帰ってくんじゃ、ないわよォ！」

叔母サンの目は腹を据えているようで、何を言っても無駄というのは嫌でも理解出来た。
故に我々は夏空の元、四人仲良く外出することとなったのである。