鶴は幸せを運ぶのか Ⅹ (ページ8)

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「もう！何でこんなことで喧嘩するの！？」

いつの間にか降りてきていたらしい優衣が、二人を｢変だよ｣と非難しながら食器の破片を片付けに駆け寄る。
ソレを見て意識が引き戻された私は、"片付けなきゃ"という単純な思考に従って優衣の元へ近付いた。

「八つ当たりはみっともないっつの」
『……真司、もうやめ、』
「何があったか知らないけど！お前いつもそうなんだよ！何も言わないで…一人で格好良いつもりかよ！」

面倒なことになるのを理解して、優衣を自らの後ろへ移動させて庇う。
そこまで周りが見えないヤツらだとは思わないけれど、万が一、彼女が喧嘩に巻き込まれないためだ。

真っ先にとった行動が"喧嘩を止める"ことではなく"優衣を守る"ことだったあたり、私もいつも通りじゃないんだろう。勿論常日頃から優衣を気に留めてはいるが、普段なら、私は問題の元を断つことを選んだハズだ。
ソレをしなかったのは、心配より面倒が勝っていたから。この場をさっさと脱したかったから。同居人であろうとも、人間と関わりたくなかったから。
元々、今日は一人になりたかったのだ。

「お前のような馬鹿にベラベラ喋る大馬鹿が居るか…！」
「離せよ…離せって言ってんだよ！」
『子供みたいな言い合いしないでくれる？やるなら他所でやって』
「…何だと？」
『誰がコレ片付けると思ってんの？お前らの尻拭いするこっちの身にもなれよ』
「馬鹿やらかしたのは城戸だろう」
『原因作ったの誰』
「お姉ちゃん！」

真司と蓮は胸ぐらを掴み合い、いよいよ小競り合いの終わりは見えなくなった。
口を挟んだのは得策ではなかったのだろうけれど、無意識も同然だったのだから仕方ない。このままでは外へ出向くことはおろか、目の前に散らばった破片の片付けすら出来ないと思ったのだ。