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「"本日売上絶好調"？"後よろしく沙奈子"…"あと風呂も今日からお湯いっぱい溜めてね"…」
彼らは二人揃って、不思議そうにカウンターを眺めていた。真司の手には一枚の紙があり、彼はソレを読み上げているようである。多分、アレは置き手紙だ。
カウンターには、通常花鶏で使用している食器類が、綺麗に並べて置いてある。
「って、何だよ叔母さん…また同好会かよ…アレ、Aちゃん？」
『…真司、おはよ』
「おはよ…珍しいカッコしてるけど…何、どっか行くの？」
『いや…マァ、ちょっと』
歯切れ悪い私の応答に、真司も多少の違和感を覚えたらしい。
元は誰にも会わずに出ていくつもりだったから、言い訳も何も練っていなかったのだ。
「この程度なら一人で十分だろう。やっとけ」
「オイ待てよ、何で俺なんだよ！」
「お前が満足に出来るのは家事くらいだろうが」
「何…？」
「無理だって言うなら、Aだっている。二人でやったらどうだ」
『…は？何、勝手に』
「この前、出来る限り頑張るだとか啖呵切ってたろ」
『アレは本心だけど、ソレとコレとは話が違うでしょ。何で他人事みたいな態度なワケ？』
噛み付くような口調になったのは、蓮の態度への苛立ちが半分、予定を崩されたことへの苛立ちが半分。そもそも、人と関わりたくなくて外に向かっていたのだから、ソレが叶わなかったことへの苛立ちもあるかもしれない。
「勝手に決めんなよ！お前は他に何が出来んだよ！」
「いいからやれ！」
「お前がやれっつんだよ！」
「…」
「何だよ！お前がやれよ！」
掃除用に置いてあるタオルを投げつけあって、意地の張り合いのような喧嘩が勃発する。
最終的に、蓮が真司の背後へタオルを投げたことによって、その生産性のない争いは区切りが着いた。ボールを投げられた飼い犬みたいに、真司は投げ捨てられたタオルを拾いに行く。
「お前いい加減にしろよ！」
真司はヤケになったようで、部屋の奥へ戻ろうとする蓮目掛けて拾ったタオルを投げつけた。
しかしその軌道上にはカウンターがある。その上に並べられていた食器類は床へと落ち、ガシャン！と嫌な音を鳴らして粉々に砕けた。
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年4月26日 18時
