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ーとぷん、
聞こえたその音に顔を上げる。
ーとぷん、
続け様に聞こえたその音は、モンスターが倒された音。
初めに聞こえたものはバズスティンガー･ブルームのモノ。そして次に聞こえたものはバズスティンガー･フロストのものだ。後者はツチバチの特性を備えたモンスターで、その性質から考えるに、バズスティンガー･ブルームに加勢しようと現れたのだろう。
そして、モンスターが倒されたということは、ライダー達が現実世界へ戻ってくる。
「蓮、」
姿を見せた蓮に、恵里サンは身を乗り出して言った。倒れかける彼女の体を支えれば、その奥から真司の姿も見えてくる。
「私のせいなんでしょ？」
恵里サンは言った。
「違う。俺が勝手に決めたんだ。お前は何も心配するな」
昨夜蓮が述べた、"アイツは妙に勘が良い"の言葉を思い出す。彼が、恵里サンの傍から離れようとした原因の一つとなる言葉だ。
きっと、彼女は気付いている。どこまでかは分からないけれど、少なくとも、"蓮が自身の為に身を削っている"ということは分かっているのだろう。
蓮が目の前で仮面ライダーナイトへ変身した時。その光景を映した瞳に浮かんでいたのは、多分、"納得"だったのだ。
恐怖でも困惑でもない。自分の想像を裏付ける現象が目の前で起こったから、純粋に腑に落ちた。ただ、それだけのことだった。
『蓮、』
彼は恵里サンに近付くことなく一直線にバイクへと向かって、また何処かへ消えようとする。ソレに至るまでの理由は知っていながらも、どうしても、引き留めずには居られなかったのだ。
彼は一瞬こちらを見遣ったけれど、しかし何も言わず、バイクに跨った。
結局引き留めることは叶わず、彼の背中は見えなくなる。
「ッ…」
『恵里サンッ、』
「恵里さん、大丈夫ですかッ？」
恵里サンの体が前方に倒れ込み、咄嗟に腕を伸ばして支える。
いつの間にか傍に居た真司も駆け寄って来て、彼女の安否を確認する。恐らく彼も優衣から連絡を受け取って駆け付け、モンスターと戦ってくれていたのだろう。
浅い息を繰り返す恵里サンの肩を、蓮が消えた先を見詰めながら、留めるように抱いていた。
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年4月26日 18時
