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「なんでだよ。もう戦う必要無いんだし、堂々と一緒に居ればいいだろ？」
しかし、真司は言った。
その言葉に、彼の中では、事の全ては終わっていたのだと理解する。
真司は、"蓮はもう戦わなくていい"と思っているのだろう。本当は違う。蓮は戦わなくて良くなったのではなくて、"無理してまで戦う必要は無くなった"だけなのだ。
ライダーバトルは辞められない。ソレは何をしようと変わることは無いのである。
「忘れたのか。ライダーになった以上、戦い続けなければ……死ぬしかない」
ソレを痛い程知っているから、彼は恋人の元を離れようと決めたのだ。
「それに、無かったことにするには、戦い過ぎた」
蓮は、この数日、本気で人の命を奪おうとしたのだろう。成されることは無かったが、真司に向けた刃もオーディンに向けた刃も、確かな殺意を孕んでいたハズ。
人を殺そうとする感覚を、彼は覚えてしまったのだ。
「A、体調は」
『あ…もう、大丈夫…』
「そうか。…悪かったな」
その謝罪は、私がした治療に対するものだろう。
ずっと変わらない、分かりづらい優しさを示して、彼は夜闇に消えていった。
「折角恵里さんの意識が戻ったのに、」
「…大丈夫。まだ戦いを止める方法はあるんだ」
遠ざかっていく彼の背中に、浮かび上がるべきは、不安か、悲しみか、決意か。
彼の背中が見えなくなって尚、消えていった方向へ視線を向けて突っ立っていれば、突如明るい電子音が鳴り響いた。
出処は真司のケータイだ。小さく｢やっべ｣と零してから、彼はソレを耳に当てる。
「もしもし、あ、編集長？どうも………っエぇッ！？」
彼は驚きの声を上げて、即座に耳からケータイを離す。相手は編集長…だと言うのに、こんな短く電話が終わるものかしら。
『真司、何、どうしたの』
「やー…」
聞けば、彼は気まずげに頭を搔いて。私の耳元に口を寄せて、一言。
「クビだって、」
『……はァッ？！』
この反応は正しいと思う。
しかし真司は優衣にはバレたくないのか、｢声大きいって！｣だの言いながら、必死に私を宥めようとした。
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年4月26日 18時
