鶴は幸せを運ぶのか Ⅹ (ページ32)

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日が落ちて、いくらかいつも通り体を動かせるようになった頃。
真司と優衣、そして私は、花束と手土産とを携えて、恵里サンが眠る病院へ足を運んでいた。恋人の水入らずを邪魔をしたら悪いとも思ったけれど、顔を出すくらいはしておきたいと思ったから。

『蓮、』

しかし病院の出入口で、私達は思いもよらぬ人間に出会った。ソレは、これから見舞いに行く相手の恋人。邪魔になってしまうかしら、なんて気を使っていた相手でもある。
蓮の進行方向は我々がいる場所…つまり外であり、ソレは彼が帰ろうとしていることを意味していたのであった。

「蓮、私達…恵里さんのお見舞いに」

一度、目が合ったものの、言葉も発さずにバイクへ乗り込む彼。
そのまま通り過ぎる気も起きなかったので、話しかけた優衣に続いて、私達は花束や手土産を見せて目的を伝える。奥には、帰ろうとする彼を引き止める意も込めていた。
しかし蓮は、その行動を取りやめる様子を微塵も見せない。

「優衣、悪いが…恵里を頼む」
「……え？」
「アイツは妙に勘が良いんだ。傍に居ると、俺が何をしてるのか勘づくかもしれない」

蓮の言葉は腑に落ちた。
普通、近しい人間には、ライダーバトルと無関係でいて欲しいと願うだろう。参加するしないではなく、何も知らないままでいてほしいとは思うハズだ。
少しでも知れば危険が伴うし、何より命を懸けて戦っているとあらば、心配されるのは目に見えているから。
ソレは、相手を大切に思っていればいるほど強く願うことである。
何より、蓮は恵里サンのためにデッキを手に取った。本人にソレが知られれば…きっと、彼女は罪悪感に駆られるに違いない。