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ミラーワールドへの入口は、きっとこのパトカーだったのだろう。
意識を集中させれば…ミラーワールドに居るのはドラグレッターと、ベノスネーカー、エビルダイバー、メタルゲラス…それらが合わさったジェノサイダー。真司と浅倉が戦っていることに間違いは無かった。
しかし、思いもよらぬ気配が、一つ。
『デストワイルダー…？』
ソレは、白虎の特性を備えたモンスター。強い部類に入るモンスターではあるが、経験値のあるライダーが二人掛りで倒せないモンスターではない。そも、人を襲う際に聞こえる音も発されなかった。
とあらば、デストワイルダーは野良ではない。契約したライダー…仮面ライダータイガが存在しているのだ。
その思考に行き着いた時、数日前の夜を思い出す。兄に突き放されたと泣き崩れ、真司の腕の中で聞いた音。ガラスとガラスがぶつかる澄んだ音。
ミラーワールドには今、仮面ライダータイガが居る。
『真司、』
「…A、ちゃん…」
息を飲んだその時、ミラーワールドからライダーが帰還した。聞こえた声は真司だ。しかし、帰ってきたのは彼だけでは無い。
『浅倉…』
「…ッ、Aちゃん、今治したら、」
『平気。後で真司も治すから…』
「そうじゃなくて！」
真司に引き摺られるようにして、現実世界に現れた浅倉。彼の体は力を失っていて、死体みたいに重かった。
その体を自らの方へ引き寄せて、掌から力を送る。外傷は少なかったが、意識を失っているとはつまり、ダメージは相当のモノである。
「…目の前で、浅倉が…消えそうになってて」
『…』
「迷ったけど、やっぱり…見殺しにするのは、違う気がして、」
ソレは懺悔だった。
真司が浅倉を助けさえしなければ、彼はミラーワールドの粒子となって死んだ。人を助けると誓った真司でも、さぞ迷ったことだろう。彼によって、罪のない人間が山程殺されたことを知っているから。
それでも助けた。そして彼は、自らの判断が善であったか悪であったか、未だに苦悩している。
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年4月26日 18時
