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「二人とも、蓮お願い」
真司が言って、浅倉の元へ走っていく。ソレに是を答えて、私達は蓮と向き合った。
背後からパトカーが集まってくる音が聞こえたけれど、そちらを振り向く暇なんて私達には無い。
『蓮！』
「蓮、もう戦わなくていいんだよ！」
『ッ、蓮！』
蓮は聞く耳を持たない。
無視しているのではなくて、きっと聞こえて居ないのだろう。聞こえていたとしても、脳みそがソレを処理するのを拒んでいる。
優衣を突き飛ばして、それでも進んでいく彼を見て、私は。
『蓮！』
無防備なその右頬に、全力の平手打ちをお見舞した。
「……A、」
彼はまるで私の存在に今気付いたかのように、殴られた理由が分からない子供のように、目を見開いて私を見る。
『恵里サンが、目を覚ました』
肩に手を寄せて、脳みそに刻み込むように言い聞かせる。
『もう、戦わなくていいから』
彼は数秒沈黙して、脳内で私の言葉を咀嚼し、やっと小さく息を吐いた。一歩後退って、体の力が抜けていく。
ソレを掌で感じてから、今度は彼に力を送り込んだ。目で見える怪我だけでも、そのダメージは相当だ。当たり前だろう。オーディンと戦って生きているなんて、奇跡に等しいことなのだから。
『ヨシ』
力が吸い取られる感覚が収まってきて、代わりに平衡感覚が失われてくる頃。蓮の傷を視認できることは無くなり、その表情は和らいできていた。
もう大丈夫だ、と確信することが出来て、私はGOのサインを出す。
「A。…平気か」
『大丈夫。だから…早く恵里サンのトコに行ってやりな』
正直、大丈夫とは言い難い。
しかしソレを察されてしまえば、蓮は、恵里サンの元へ行きづらくなるだろうから。
笑顔で取り繕って、振り返って戦いの場へと向かう。優衣には、"危ないからここで待っていてくれ"と伝えた。
その場所にはパトカーが二台と、意識を失って倒れている警察官が居た。…1、2…合計で8人。浅倉を捕まえに動き、返り討ちにされたと察するには十分な光景である。
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2023年4月26日 18時
