鶴は幸せを運ぶのか Ⅹ (ページ26)

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「大丈夫ですかッ？！」
「追いかけよう、」
『乗って』

優衣が刑事サンの肩を揺すっていたが、どうやら意識は無いらしい。
それよりも浅倉を追いかける方が先だと思い直して、もう一度車に乗り込み、再びアクセルを踏み締める。
そうして車が走り出した時、横をすり抜ける黒があった。目を凝らしてみれば、ソレは見覚えのあるバイクと背中。
蓮が、浅倉を追いかけて飛び出して行ったのである。

『蓮…』

浅倉を追いかける蓮と、蓮を追いかける私達。更に後ろには令子サン達が居るだろうけれど、何の因果かか、現在行われているのはもう、ライダーによるカーチェイスに他ならなかった。

暫く走っていれば、増援のパトカーもやってくる。しかしそれらも、浅倉に対しては意味を成さなかった。
護送車の進行を止めようと正面から突っ込んでくるパトカーに、浅倉は全く億さず、速度を落とすことなく突き進んだのだ。
結果的にパトカーの方が進路を変更して、浅倉の逃亡を留めることは出来なかった。その際令子サンの車は護送車から引き離され、走っているのは正真正銘、ライダーバトルを知る者だけだ。

浅倉は突き進み、辿り着いたのは貿易港。
人気は一切と言っていいほど無く、積み上がったコンテナによって視界も悪い。そして何より、海が近いのが彼の逃げ込んだ理由だろう。一面水で埋められた海という場所は、その全てがミラーワールドへの入口となる。

ふと、浅倉の運転する護送車が、数分前のように操作を失った。
微かに破裂音が聞こえたから、パンクでもしたのだろう。先程のような原因も有り得なくは無いが、浅倉側に問題が起こったとは考えづらい。
次第に護送車は速度を落として、スイッチが切られたかのように止まった。

私達は車を降りる。護送車が止まったと同時に、前方で蓮がバイクを降りるのが見えたからだ。
浅倉も問題の一つだろうが、私達の当初の目的を考えれば、真っ先に向かうべきは蓮の元である。

『蓮ッ！』
「オイッ！」
「蓮、待って！」

叫ぶように彼の名を呼んで、三人掛りで行先を阻む。しかしボロボロのハズの彼の力は相当で、私達を振り払って前に進もうとしていた。
視線の先にあるのは浅倉の姿だ。