鶴は幸せを運ぶのか Ⅹ (ページ24)

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サイレンが鳴り響く中、私は優衣と真司を乗せて車を走らせていた。
現在、浅倉の護送が始まり、私達は彼が乗る護送車を追いかけているのである。

周囲には我々と同じく、護送車を追う車が多々あった。
その多くはマスコミで、恐らく中には令子サンも居るだろう。一瞬見えただけだから定かでは無いが、護送車を追う車の中には彼女のモノも紛れていたと思う。

ーキィィン…

そんな最中のことだった。

『……え…』
「…Aちゃん？…どうかした？」
『……今、モンスターの音が、』
「エッ…ホントに？」
『聞こえなかった？』
「ウン…」
『そ、っか…』

ほんの一瞬、確かに聞こえたモンスターの音。しかし、前方から聞こえたソレは、助手席に居る真司の耳には届かなかったらしい。
ならば私の勘違いかもしれない。そう思ったところでスグに振り払える思考ではなくて、一瞬、そのモンスターの気配を手繰ることに意識を割いた。

『…メタルゲラス、』

そうして、脳裏に浮かんだその姿。

「ソレって芝浦の…いや、今は浅倉の、」

仮面ライダーガイ･芝浦の契約モンスターであり、後に浅倉の契約モンスターとなったメタルゲラス。音の出処は前方…つまり、浅倉の乗る護送車なのだろう。浅倉は脱出するため、メタルゲラスを呼び出したのだ。限られた警察しか対処出来ない、スグに警察が駆けつけて来ない、護送中という状況で。
相も変わらず頭がキレる。しかし理解できないのは、どうやってモンスターを呼び出したかということだ。最初から契約しているベノスネーカーならまだしも、メタルゲラスは芝浦の仇である浅倉を隙あらば喰らおうと狙っているハズ。ならばあの場には契約のカードが無くてはならない。彼の持ち物は確かに、没収されていると聞いたのに…。

「ねぇ、何かおかしいよ！」

困惑した脳内で何とかハンドルを握っていれば、後部座席の優衣が声を上げた。
"おかしい"というのは、目の前を走る護送車だろう。先程まで安定した走りを見せていたソレは、三車線を左右に大きく移動しながら前へ進んでいる。周りの車にぶつかりかけるのも気にしない様子は、誰かが運転しているなんて到底思えなかった。
きっとこの想像は正しい。浅倉によって呼び出されたメタルゲラスが、運転手共々、中の警察官を喰らい尽くしたのだろう。