鶴は幸せを運ぶのか Ⅹ (ページ22)

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花鶏に帰って、真っ先に私を迎えたのは叔母サンだった。
どうやら私達が居なかったせいで、店の切り盛りが相当大変だったらしい。数日前に"出来る限り手伝う"なんて言い放った手前申し訳なさが身を襲うが、正直、今はそんな場合では無いのだ。
｢蓮ちゃんはどうしたの？｣なんて聞いてくる彼女に真実を伝えたい気持ちもあったが、そんなことをしては余計話が拗れるので辞めておく。｢新しく人を雇わなきゃ｣なんて零す叔母サンの横を通って、何とか私は優衣と真司と顔を突き合わせることが出来たのだ。

「蓮に会ったの？！」
『ウン…でも、恵里サンのこと聞くより前だったから止められなかった。怪我はある程度治したけど…治り切る前に、戦いに行っちゃって、』
「相手はッ？」
『オーディン、』
「…ソレ、蓮は…」
『死んではいない。まだ…還ってきて無いから。でも勿論、タダじゃ済まないと思う』

自分の持ち得る全ての情報を渡し、反対に二人からも情報を得る。
それらから辿り着いたのは矢張り、一刻も早く蓮を止めるということだった。恵里サンの無事を伝えれば、彼が無理に戦う理由は無くなるから。

「じゃあ蓮は、浅倉威の護送を狙って？」

そして、私達の次の行動を定めたのは、真司が持ち帰った情報だった。
蓮を探して北岡サン宅に寄った際、浅倉の弁護士である彼から聞き、また、テレビの中継からも知らされた確かな情報である。

「今の蓮ならきっと無茶してでも浅倉と戦おうとすると思う」
『その前に止めないと、』
「ウン、蓮を恵里サンの所に連れてくんだ」

昨日、北岡サンの策略によって警察に捕まった浅倉は、今日護送される手筈となっているらしい。蓮を探すことに夢中で気付かなかったが、どうやら世間はこの話題で持ち切りのようだ。
午後三時。
護送が始まる時間まで、もう一時間を切っている。

蓮は必ず、浅倉と戦おうとするだろう。オーディンに立ち向かった彼が、浅倉との戦闘を避けるとは思えない。
ほんの少しでも隙があれば、護送が失敗に終わろうが自らが罪に問われようが、浅倉と戦おうとするハズだ。

時間が惜しい。
私達の脳裏はこの時、共有されているかの如く同じ思考を展開していただろう。
故に示し合わせることも無く、私達はなりふり構わず階段を駆け下りた。